声優の業界団体が共同声明:無断での生成AI利用に関し

生成AIへの音声無断利用に関する声明

生成AIによる声の無断利用が問題視される中、声優などの業界団体が声明を発表しました。AIの利用ルールの整備と声の権利保護を訴えています。特に、声の無断使用を禁止すること、利用許諾を必要とすることを求めています。一方で、現在の法律では声そのものは著作物として認められておらず、法整備に向けての高いハードルが見込まれています。

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目次

声優などの業界団体の声明

声優の声が生成AIによって無断で利用されるケースが増加していることを受け、2024年11月13日に「日本俳優連合」、「日本芸能マネージメント事業者協会」、「日本声優事業社協議会」の3つの業界団体が都内で記者会見を開き、声明を発表し、その中で生成AIで声優の声を利用する場合、本人の許諾を得ることや、生成された音声であることを明記することを求めています。また、演技の領域は人間が行うべきだとし、アニメや外国映画の吹き替えで生成AIの音声を使用しないことも強調しました。

団体によると、生成AIを使ってアニメキャラクターの声で歌を歌わせるなど、無断で作成された音声や映像がインターネット上に投稿・販売されるケースが増えているといいます。このため、業界団体は国や制作会社、AI事業者などに対して、AI音声の利用ルール整備を求めていく方針です。

日本俳優連合副理事長で声優の池水通洋さんは「生成AIによって文化芸術分野のクリエーターが大打撃を受け、技能の継承が難しくなる恐れがある」とし、適正なAI利用のモデルケースを作成・提示する必要性を訴えました。また、日本俳優連合常務理事の島田敏さんは「海外では声優の権利保護の法整備が進んでいる一方、日本では抜本的な議論が進んでいない」とし、声優業界全体で声の権利を守るために適切な共存方法を模索する必要があると述べました。

弁護士の見解

AIに関する法制度に詳しい田邉幸太郎弁護士は、「現在の法律では声そのものは著作物として認められていないため、保護するのは難しい」とし、技術の進歩に伴いAIに関する権利関係が複雑化していることを指摘しました。

田邉弁護士は、声を守るための法整備に加えて、声優とAI開発者の契約の整備、声のデータベース作成などの技術的対応が必要であり、「法律、契約、技術の三位一体でAIとの向き合い方を考えていくべきだ」と強調しました。

日本俳優連合が昨年12月から今年2月にかけて行った調査によれば、少なくとも267人の声優や俳優の声が無断で利用されていたと報告されています。特に、人気キャラクターに似せた「AIカバー」動画の投稿が増えており、声優たちの権利侵害が問題になっています。

経緯:『NOMORE無断生成AI』啓発キャンペーン

こうした背景から、声優有志である山寺宏一さんや梶裕貴さんなど26人が、『NOMORE無断生成AI』というタイトルで啓発キャンペーンを先月より開始しました。このキャンペーンでは啓発動画の公開を通じて、声の無断利用をなくすよう訴えています。

キャンペーンに参加している声優のかないみかさんは、「無断で私たちの声を使うのはやめてほしい」とし、事前に許諾を得た上で共にAIを利用することで、AI技術がより素晴らしいものになると述べています。声優有志の会では、今後も啓発活動を続け、AIとの共存の在り方を社会に広めていく方針です。

補足:業界3団体について

今回声明を発表した「日本俳優連合」、「日本芸能マネージメント事業者協会」、「日本声優事業社協議会」は、俳優や声優の権利保護と業界の健全な発展を目的とした団体です。

日本俳優連合(通称:日俳連):俳優の権利保護と労働環境の改善を目的に活動しており、約2,500名の俳優が加入。NHKや民放との団体協約の締結なども行っています。

日本芸能マネージメント事業者協会(通称:マネ協):俳優や声優のマネジメントを行う約100社が加盟し、映像や演劇などに出演するタレントの権利保護を目指しています。

日本声優事業社協議会(通称:声事協):声優のマネジメントを行う事務所が加盟し、声優文化の保護と発展を目的に活動しています。

「声の生成AI無断使用」について一言

たびたび報じられる「声の無断使用」についてです。少し調べてみました。「声自体に著作権はあるか?」こちらについては、イベントやテレビに出演している声優の声を録音したデータは著作物として認められるということです。著作権の基本的な考え方にもとづき、私的利用は可能、商用利用は許諾が必要という結論に至ります。

では、「声の無断使用を難しくしているのは何か?」と深掘ると、「声とは何か?」という問いがポイントとなるようです。つまり、声というものを分解すると「音色、話し方のパターン、特徴的な言い回しなど」いくつかの要素から構成されます。音声モデルを開発する際の学習データに上述の音声データを無断使用すること自体は罰せられるべきですが、最終的な成果物に対して、これが山寺宏一さん、野沢雅子さんの声を模倣している、と言い切るのは難しいということですね。

声優の方々のコメントからもゴールは「技術との共存」という点はずれていないと思います(避けられない現実であるため)。また法整備が必要であることは間違いないので、AIモデルへのデータ活用など法的排除に合理性が認められる部分から定義していくことが良いのではないかと思います。あくまでも専門家でない立場での理解なのでご参考までにお読みください。

出所:“AIで声の無断利用やめて”声優などの業界団体が声明

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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