2024年7月17日、一般社団法人日本新聞協会は、検索連動型の生成AIサービスが報道コンテンツを無断で利用している現状に対して強い懸念を表明しました。同協会は、生成AI事業者が報道コンテンツを学習や利用する際には必ず許諾を得るべきだと強調し、現行の法制度が不十分であるとして法整備の必要性を訴えました。
日本新聞協会とは
日本新聞協会は、全国の新聞社・通信社・放送局が倫理の向上を目指す自主的な組織として戦後間もない1946年7月23日に創立された組織で、事務局を東京都千代田区内幸町に置いています。
新聞の発行部数、普及度合いに関する調査・研究、機関誌の発行などの広報、講座・セミナー開催などの教育・交流、「春の新聞週間」などの企画・イベントなどが主な活動内容になります。
新聞各社の代表者で構成される総会、理事会のもと、各種の委員会、専門部会を配置し、活動を行っています。朝日新聞、日本経済新聞、中日新聞といった新聞、NHK、TBSといったテレビ局、共同通信などの通信社など全国から57名の役員によって組織が構成されています。
検索連動型の生成AIサービスの課題
著作権侵害、誤情報の生成、公正競争上の懸念の3点が課題として上げられています。
著作権侵害
検索連動型の生成AIサービスが報道コンテンツを無断で利用し、記事に類似した回答を生成することが著作権侵害に該当すると指摘しています。
これらのサービスは、報道機関が多大な労力とコストをかけて作成した知的財産を無断で使用し、対価を支払うことなく利益を得ることにつながっているということです。
誤情報の生成
生成AIサービスは、報道機関の記事を不適切に転用・加工することで、事実関係に誤りのある回答を生成するケースが見られます。
こうした誤情報はユーザーに不利益をもたらすだけでなく、参照元として表示される報道機関の信用を低下させる恐れがあるということです。
公正競争上の懸念
生成AIサービスによるコンテンツ利用を回避させるためには、ウェブ上における記事要素の読み込みを制限することもできます。
ただし、検索結果の表示順位が下がること(ビジネスにおける不利益)とのトレードオフとなっており、コンテンツ制作サイドとして現実的に対処できる手段が限られるという意味において、市場の公正性が阻害されているという側面もあるということです。
日本新聞協会が求めること
日本新聞協会は、生成AI事業者に対し、報道コンテンツを利用する際には必ず著作権者の許諾を得ることを強く求めています。これにより、報道機関の知的財産権が保護され、公正な対価が支払われることを期待しています。
また、情報の正確性と信頼性を確保するための責任を果たすべきであり、誤情報が広まることを防ぎ、報道機関の信頼性を守るために、適切な対応を求めています。
政府に対しては、著作権法をはじめとする知的財産権関連の法制度については、現状グレーゾーンも多く残存することから、見直しを早急に行うよう求めています。生成AI時代に対応した法制度の整備が急務であると訴えています。
「日本新聞協会の声明」について一言
Googleやbingといった検索エンジンは従来、個別事業者や個人の運営するサイトの「道案内」役でしたが、権利者を代表してコンテンツを生成するまでにその力が強大なものとなっているということです(記事では「種明かし」と表現されていますが、少しわかりづらい気もします・・・)。
ユーザー目線では、情報検索の目的は答えを得ることであり、特定のコンテンツ権利者のサイトに行くことは手段なので、ゼロクリックリサーチ(サイトを訪問しない検索手法)は避けようのない進化かと思っています。少し懐古主義的な記述があったので、そこはどうかなと。
コンテンツ保護は当然必要ですが、OpenAIがメディア企業と提携、買収などをしている動きを見ていると、早晩日本のコンテンツ産業においても権利保護の議論は進展するのではないかと想像します。