NotebookLMとは、Googleが提供する生成AIを活用したノートブック型ツールです。ユーザー自身がアップロードした資料をベースに、検索、要約、分析、提案などをチャット形式で得られる点が大きな特徴です。Geminiを基盤にしており、従来のGoogle Workspaceでは扱いづらかった形式のデータにも対応しています。
情報源が限定されているため回答の精度が高く、誤情報のリスクが少ないことも利点です。使い方は直感的で、ノートブックの作成やデータの取り込みもスムーズに行え、業務や学習に幅広く活用できる設計になっています。また、ビジネスや教育の現場でも有効なPlusプランが登場し、今後の展開にも注目が集まっています。
NotebookLMとは
NotebookLMは、Googleが提供するノートブック形式の生成AIツールです。ユーザーがアップロードしたドキュメント、ウェブページ、PDF、音声、動画などをソースとして指定し、その内容に基づいた検索、要約、アドバイスなどを生成できます。Geminiをベースに開発されており、従来のGoogle Workspace with Geminiでは対応できなかった形式の情報も処理できる点が特徴です。
対象となる情報がユーザー自身のアップロードデータに限定されるため、インターネット上の曖昧な情報を参照しない構造になっており、ハルシネーションと呼ばれる誤回答のリスクが抑えられます。やり取りは基本的にチャット形式で進行し、複雑な設定を行わずに直感的な操作で使えるインターフェースが用意されています。
個人のGoogleアカウントでも無料で利用でき、Google Workspaceアカウントを持つユーザーはWorkspaceの利用規約に基づいてNotebookLMを使うことができます。2024年末には、搭載モデルがGemini 2.0へとアップグレードされ、分析支援、コーディング補助、動画生成、音声再生などの機能が追加されました。音声生成は英語のみ対応していますが、日本語への対応も今後予定されています。
また、2024年12月には企業や教育機関向けにNotebookLM Plusが発表され、2025年初頭からは個人向けにもGoogle One AI Premium経由で提供が開始される予定です。Plusプランでは、ノートブック数やソース数、チャット回数が拡張されるだけでなく、チャットの応答スタイルや出力長をカスタマイズできる高度な設定、利用状況の分析、チャットのみの共有機能などが追加されています。次のように無料版と有料版には明確な違いがあります。
機能/特徴 | NotebookLM(無料版) | NotebookLM Plus(有料版) |
対象ユーザー | 個人 | 企業、学校、大学、エンタープライズ |
ノートブック数 | 最大100 | 最大500 |
ソース数(ノートブック単位) | 最大50 | 最大300 |
チャットクエリ数(1日) | 最大50 | 最大500 |
オーディオ生成(1日) | 最大3 | 最大20 |
プレミアム機能 | なし | 応答スタイル設定、出力長の調整、利用状況の分析など |

NotebookLMと各種ツールとの比較
NotebookLMは複数の生成AIツールやノート管理アプリと比較されることが多く、それぞれに異なる強みと用途があります。ここではGPTs、Notion AI、Obsidian、Evernoteとの違いを整理します。
ChatGPT(GPTs)との違いは情報源と用途の明確さ
NotebookLMはアップロードされたドキュメントを情報源とし、分析や要約、検索を行います。一方、GPTsはインターネット上の情報や事前学習済みデータを使って応答を生成します。NotebookLMは特定の資料に基づく回答に強く、ChatGPTは一般的な質問や幅広い知識の提供に適しています。
NotebookLM | ChatGPT(GPTs) | |
主な用途 | ドキュメントの解析・要約・検索 | 一般的な質問応答や文章生成 |
情報源 | ユーザーがアップロードした資料 | インターネット上の情報や事前学習データ |
インターフェース | ノートブック形式 | チャット形式 |
音声出力機能 | 対応(英語のみ) | 非対応 |
月額料金 | 20ドル(無料プランあり) | 20ドル(無料プランあり) |
特徴 | 資料単位での正確な回答 | 幅広いトピックに対する柔軟な応答 |
Notion AIとの違いは目的と対象範囲の広さ
Notion AIはページ単位での要約や翻訳などに対応し、ドキュメント、タスク、データベース、チーム管理が統合されたオールインワンプラットフォームに組み込まれています。NotebookLMは複数の資料を横断的に解析し、相関関係の発見や要点の抽出に長けています。音声出力機能がある点もNotebookLMの特徴です。一方、Notionはドキュメント作成や業務管理を中心に使いたい場合に適しており、NotebookLMは文献の読み込みや要約、リサーチ用途に向いています。
NotebookLM | Notion AI | |
主な用途 | 資料の横断的分析、リサーチ、要点抽出 | ページ単位の要約、翻訳、文章作成など |
管理形式 | 複数ドキュメントを一括で扱う形式 | ページ・ブロックベースの柔軟な構造 |
音声出力機能 | 対応(英語のみ) | 非対応 |
カスタマイズ性 | シンプルなノート構成 | UIやページ構成を自由に設計可能 |
特徴 | リサーチ用途に特化、要点抽出に強み | 業務管理と文書作成の一体型ツール |
Evernoteとの違いは検索型と要約型の役割分担
Evernoteはあらゆる形式のノートやファイルを集約し、タグやOCRによる全文検索に対応した長期的な情報ストレージです。NotebookLMはそのストックされた情報の中から必要な要点を抽出し、Q&Aや要約を返すAIファーストの設計になっています。
Evernoteは資料の蓄積に特化しており、NotebookLMは必要な部分だけを抽出して活用したい場面に適しています。Evernoteに蓄積した資料をPDFなどでエクスポートし、NotebookLMに読み込ませて分析するという連携も可能です。情報の保存と活用を分担する形での併用が現実的な使い方となります。
NotebookLM | Evernote | |
主な用途 | AIによるドキュメント要約とQ&A | ノートの蓄積・タグ検索・OCR活用 |
音声出力機能 | 対応(英語のみ) | 非対応 |
AI機能の有無 | 標準搭載 | 外部連携やアドオンで一部対応 |
データ活用方法 | 要点抽出と文脈理解を重視 | 検索性と記録性を重視 |
特徴 | 既存文書の分析と要約に特化 | 長期保存と検索に強み、情報ストレージ向き |
NotebookLMの使い方

NotebookLMは、Googleアカウントでログインすればすぐに利用を開始できます。基本的な操作は次のとおりです。
- NotebookLM公式サイトにアクセス
- Googleアカウントでログイン
- 「ノートブックを新規作成」をクリック
- アップロードするファイル形式を選択し、ドキュメントをインポート
- NotebookLMが要約や主要トピックを自動生成
- チャット形式で質問や検索を実行
チャットの履歴は自動的に保存され、重要な回答にはハイライトやメモを追加できます。他ユーザーとの共有や、再質問・再分析もシームレスに行えます。NotebookLM Plusにアップグレードすると、ノートブック数やソース数、チャットクエリ上限などが拡張され、音声要約の生成回数も増加します。
スマートフォンでの利用方法と注意点
スマートフォンから利用する場合は、ブラウザでNotebookLMにアクセスし、Googleアカウントでログインします。ブラウザのメニューから「ホーム画面に追加」を選ぶと、ショートカットアイコンをホーム画面に設置できます。
ただし、スマートフォンでの利用には制限があります。画面サイズが小さいため、長文の作成や複雑な操作は難しくなる可能性があります。また、音声機能や大容量ファイルを扱う際は通信量が多くなるため、Wi-Fi環境での利用が推奨されます。
類似ツールとの使い分け
Googleの生成AIであるGeminiは、NotebookLM、Geminiサイドパネル、Geminiアプリを通じて活用できます。しかし、同じ技術基盤を持ちながらも用途や操作感が異なります。目的に応じて適切なツールを使い分けることで、より精度の高い作業が可能になります。
NotebookLMは膨大なデータに基づく分析や回答に適しており、GoogleドライブのファイルやWebサイト、YouTube動画などをデータソースとして登録できます。資料作成支援や社内文書に基づいた質疑応答を行いたいときに有効です。NotebookLM Plusでは、共有機能も強化されており、チーム利用にも適しています。ただし、事前にデータソースの登録が必要です。
Geminiサイドパネルは、GoogleドキュメントやGmailなどの作業画面から直接呼び出す形式で、日常的な反復作業の効率化に向いています。文書やファイルの要約、議事録の自動生成、メール返信文の作成など、作業の合間に素早く処理したい業務に最適です。
Geminiアプリは、事前登録やドキュメントの準備が不要で、調べ物やアイデア出しの壁打ちに向いています。気軽に使える汎用チャットとして、柔軟な活用が可能です。
それぞれのツールの特徴を理解したうえで、同じプロンプトを使って結果を比較しながら、自分に合った使い方を見つけることが推奨されます。
NotebookLMの料金体系
NotebookLMには、無料版と有料版のNotebookLM Plusがあり、利用経路によって料金が異なります。
Google Workspaceを通じて利用する場合は、ユーザー1人あたり月額20ドルからのアドオン料金が発生します。利用には、Gemini Enterprise、Gemini Business、Gemini Education Premium、Gemini Educationのいずれかのアドオンを管理者が有効にしている必要があります。
Google Cloud経由で利用する場合は、Agentspace、Google Agentspace for Enterprise、またはGoogle Agentspace for Enterprise Plusのいずれかのアクセス権が必要です。具体的な料金はGoogle Cloudの営業チームへの問い合わせが必要になります。
NotebookLMの使用例
社内ナレッジの統合と活用
NotebookLMは、分散しがちな社内資料を1つのノートブックに集約し、効率的なナレッジ活用を実現します。議事録、マニュアル、研修資料、顧客対応ログなど、部門をまたぐ多様なドキュメントを一括で読み込ませることで、情報の一元化が可能になります。資料同士の関連性を踏まえた分析や、検索性の向上により、社内の情報共有や意思決定のスピードが向上します。
営業提案書や報告書の下地作成
NotebookLMを使えば、過去の提案資料や実績レポートをもとに、次の提案や報告書の骨子を迅速に構築できます。複数の資料から要点を抽出し、ターゲットや目的に沿ったストーリーを組み立てる作業を、チャット形式で行うことが可能です。資料作成の初期段階において時間短縮につながり、提案やレポートの質も向上します。
研修教材の自動要約と個別対応
NotebookLMは、社内研修用の長文マニュアルや録画講義を要約し、受講者ごとに最適な内容を提示することが可能です。内容を短く整理するだけでなく、個々の理解度や関心に応じた質問にも対応できるため、研修のパーソナライズにも活用できます。教材として使う資料を蓄積しておけば、日々の学びや振り返りも容易になります。
カスタマーサポート対応の標準化と効率化
NotebookLMに過去のFAQ、対応履歴、製品マニュアルなどをアップロードすれば、問い合わせに対する回答の標準化と効率化が実現できます。サポート担当者が特定のトラブルについて検索や質問を行うと、過去の対応や手順を即座に参照できます。応答のスピードと正確性が向上し、サポート品質の平準化にもつながります。
現状のNotebookLMの制限と課題
NotebookLMは多くの機能を備えたAIツールですが、いくつかの制限と注意点があります。対応しているファイル形式はGoogleドキュメントやPDF、テキストファイル、Webページのテキストなどに限られており、1つのソースにつき最大500,000語までという制限があります。また、アップロードされたドキュメントやデータはAIモデルの学習には利用されませんが、人間のレビュアーが確認する可能性があるため、機密情報のアップロードは避ける必要があります。
Google Workspace利用時のセキュリティ
Google Workspace経由でNotebookLMを利用する場合、データはGoogle Workspaceの規約に基づいて保護されます。ユーザーがアップロードしたデータや入力内容、AIの回答結果は、AIモデルのトレーニングに使用されず、人間のレビュアーによる確認も行われません。企業が業務で導入する際にも、一定のセキュリティ水準を保ったまま活用できます。
回答の信頼性と目視確認の重要性
NotebookLMは、指定したソースに基づいてGeminiが回答を生成する仕組みのため、ハルシネーションの発生を大幅に抑えることができます。ただし、生成された回答は常に正確とは限らず、人間による確認が不可欠です。特に企業データや顧客情報を扱う場合には、最終的な出力内容を慎重にチェックすることが求められます。
最後に
NotebookLMは、ドキュメントの要点抽出や分析を行う用途に特化した生成AIツールとして、既存のAIチャットツールとは異なる強みを発揮します。個人利用だけでなく、チームや組織での活用にも対応できる構造が整っており、研修、提案資料の作成、ナレッジ管理、カスタマーサポートといった多様な業務に適しています。
NotionやEvernoteなどの他ツールとは目的や機能の焦点が異なり、NotebookLMならではの使い方が求められます。導入にあたっては制限や注意点もありますが、正しく運用すれば安全性や効率の面で大きな成果を得ることが可能です。自社に適した使い方を模索しながら、業務に取り入れることで価値あるアウトプットを引き出せます。
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