株式会社電通が国内電通グループ全体で推進する独自のAI戦略「AI For Growth」を発表しました。この戦略は、AI技術を駆使して顧客企業や社会全体の成長を目指すもので、AIを単なる自動化のツールとしてではなく、人間の知識と組み合わせて高め合うパートナーとして位置づけています。また、広告コピー生成ツール「AICO2」の詳細についても発表され、電通のAI戦略の具体例として注目されています。
電通のAI戦略
「AI For Growth」:AIと人間の知の融合で成長を促進。このビジョンは、「人間の知(=Intelligence)とAIの知を融合させることで、顧客企業や社会の成長に貢献する」というものであり、既に各グループ会社が取り組んでいるさまざまなAI活用に共通する考え方です。
この戦略は、クライアントサービス、AIアセット、コーポレート機能の3つのレイヤーと8つの領域から構成されています。
AICO2について
このツールは、コピーライターの知見をAIに集約し、人間のコピーライターとAIが協力して広告コピーの品質向上を助けます。ChatGPTに代表される生成AIの登場により、広告コミュニケーション領域でもAIの活用が進んでいますが、「AICO2」は独自にAIをトレーニングしており、より心を動かすコピーの生成が可能です。
「AICO2」には、電通のコピーライターが培ってきた、心の琴線に触れるコピーを生み出すための思考プロセスや推論能力を高めるべくFine-TuningしたGPT-3.5 Turboモデルが実装されています。コピーライターの意図や思考プロセスも学習させており、キャッチコピーとして「伝えたいこと」や「商品名」「解決したい課題」などを入力すると、「伝えるべきこと」と「表現方法」が理由とともに表示されます。また、「AICO2」は、生成したコピーを自動で採点し、一定の基準に達したもののみ出力する機能も搭載しています。
東京大学次世代知能科学研究センター(AIセンター)と共同で「AICO2」の性能評価を実施しました。GPT-4モデルとコピーライターの思考によりFine-TuningしたGPT-3.5 Turboモデルを使用してコピーライティングのタスクを実施し、その結果を比較しました。その結果、評価はGPT-4 < コピーライター < Fine-Tuningされたモデルとなり、コピーライターの思考をAIに教え込むことで、より高品質なコピーの生成が可能であることが示されました。
「電通のAI戦略」について一言
さすが大大大企業。クライアントサービス、アセット、コーポレート活動まで、全社活動の全てにAIが掛け合わされており、パワーを感じます。80点の文章を書くことは得意なLLMですが、ファインチューニングという追加学習の手法を用いることで電通のトップコピーライターのような100点領域のアウトプットが出せるのは、進歩の証ではないでしょうか。
一方で100点が取れるツールが存在するにも関わらず電通に広告を作っていただく価値は残るのだろうか、というのは難しいポイントです。これはコンサルティングにも言えることですが。これからのクライアントサービス(広告業、コンサル)は全体プロデュース、クオリティコントロール(審美眼)といった、スモールチームによる高単価短時間チャージのスタイルが主流になるのではないかと、個人的には思っています。
出所:国内電通グループ、独自のAI戦略を新ビジョン「AI For Growth」として発表 / 電通コピーライターが長年培ってきた思考プロセスを学習した AI広告コピー生成ツール「AICO2」を開発