RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは?導入の背景と任せるべき業務範囲

what is rpa

RPA(Robotic Process Automation、ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、パソコン上で人が行う作業を自動化し、業務の効率化を実現するための技術です。RPAの導入により繰り返し作業や定型業務を正確かつ迅速に遂行できるようになります。金融機関をはじめとする多くの企業で導入が進む背景には、生産性の向上や労働人口減少への対応といった社会的な課題があります。RPAは、複雑なシステム改修を必要とせず、多様な業務に対応可能な柔軟性を備えていますが、導入には適切な業務範囲の見極めと、長期的な管理体制の構築が欠かせません。

目次

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは

RPA(Robotic Process Automation、ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、ルールエンジンや機械学習、人工知能といった認知技術を活用して業務の効率化や自動化を目指す取り組みです。主にホワイトカラー業務における作業を補完し、効率的に遂行する役割を果たします。RPAの仕組みは仮想知的労働者とも呼ばれています。

RPAは複数のシステムをまたいだ操作や同じ手順を正確に繰り返す作業を得意としていますが、状況に応じた柔軟な判断を行うことはできません。そのため、導入を検討する際には、自動化の対象となる業務を適切に見極めることが欠かせません。

RPAの導入が増えている背景

RPAが注目される背景には、ホワイトカラー業務の生産性向上、労働人口の減少などの課題があります。大規模なシステム改修を必要とせず、比較的容易に導入可能な点がRPAの普及を後押ししています。

金融機関を中心にRPA導入の動きは日本だけでなく欧米でも急速に進んでいます。この現象の背景には、規制強化と人材不足、技術進化による利便性向上、成功事例の増加といった要因が挙げられます。

規制強化と人材不足

欧米では金融危機以降、厳しいガバナンス体制が求められる一方、オフショア拠点のコスト増加が課題となっています。その結果、業務品質を維持しつつコスト削減を図るため、多くの銀行がRPAを活用しオペレーションモデルの見直しを進めています。一方で日本では、長時間労働の是正や働き方改革が進展しており、労働力減少という長期的課題への対応も求められています。このような背景が、RPAの急速な普及を支えています。

技術進化による利便性向上

RPA技術は進化を続けています。ウェブアプリケーションや仮想環境など、多様な情報やシステムに対応可能になり、画面操作記録やドラッグ・アンド・ドロップを活用したプロセス設定が簡便化されたことで、現場レベルでの導入が容易になっています。また、初期費用を抑えたビジネスモデルや機械学習機能を備えたソリューションの登場が、適用業務の拡大を促しています。

成功事例の増加

RPAは短期間での導入可能で効果もすぐに現れるため、他社の成功事例が速やかに共有されており、RPA導入を検討する企業が具体的な成果を確認しやすくなっています。社内プロジェクトでは特定部署で小規模なRPA導入を試行し、その結果を基に全社導入を検討するアプローチが可能です。このような特徴が、RPA普及を加速させる一因となっています。

RPAのメリットとデメリット

RPAには、作業を正確にこなす能力や圧倒的なスピードがあります。人の手では不可能な24時間365日稼働が可能で、集中力の途切れによる精度低下もありません。さらに、多様なアプリケーションに対応可能な汎用性を持ち、パターン化された作業に優れています。

ただし、RPAは例外処理や判断が必要な業務には弱いという特徴があります。エラーに直面すると動作が停止し、複雑な指示を行う際には作業を細分化する必要があります。イレギュラーが頻発する業務や意思決定を要するタスクでは、システムの組み直しやメンテナンスが煩雑になることがあり、自動化によって逆にコストが増大する可能性もあります。

生産性の向上

RPAは迅速かつ正確な作業を実現します。その結果、人間は判断や創造、コミュニケーションといった付加価値の高い業務に集中できます。また、業務の頻度や負荷に関する制約を解消し、属人化の排除や引き継ぎ効率の向上を通じて、業務全体の改善につながります。

労働環境の改善とコスト削減

時間外労働や休日出勤の削減が可能となり、単純作業にかかる人件費や外部委託費の削減が見込まれます。また、将来的な労働力不足への対応にも寄与します。

人的ミスの防止

繰り返し作業や単純作業で発生しがちなミスを防ぎ、期限や正確性に対するストレスを軽減します。このことで、心理的な負担の軽減も期待できます。

RPAに任せるべき業務範囲

RPAは、人がパソコン上で行う日常的な作業をそのまま自動化することを目的としています。人間が操作するのと同じように、複数のシステムやアプリケーションを操作し、指定された処理を実行することができます。RPAツールには、画面操作記録やドラッグ・アンド・ドロップによるプロセス設定機能が備わっており、プログラミングの知識がなくても直感的に設定可能です。この特性により、既存のシステムや業務フローを大幅に変更せずに効率化を実現できる点が、RPAの大きな魅力です。

RPAは設定されたプロセスをその通りに実行する仕組みであり、判断が必要な業務や手順が毎回異なる業務には適しません。しかし、定型的で繰り返し行う作業には特に効果を発揮します。例えば、複数のシステムを使ってデータを登録する業務や、情報検索のために複数のアプリケーションを操作し、結果を集計する作業などに適用することで、従来30分かかっていた業務を1分に短縮した事例もあります。導入直後から具体的な効果を確認できる点もRPAの特徴です。

既存システムとの連携を図る業務

RPAは既存システムと連携しながら作業を自動化する際に効果的です。例えば、ウェブアプリケーションから情報を集計し、定期的にメールで報告する業務を自動化する場合に役立ちます。VBAを活用したマクロで対応可能な範囲もありますが、外部システムとの連携が求められる場合や、個人のスキルに依存する運用は組織的な課題となることが少なくありません。そのため、RPAの導入がより効果的な選択肢となります。

大量のデータ処理が必要な業務

商品情報や顧客情報など、膨大な量のデータを処理する業務ではRPAが特に有効です。効率的にデータを処理するには、RPAを活用することでパソコン性能によるボトルネックを回避し、安定した作業を実現できます。このような業務においてRPAを選択することで、効率化の目標を達成しやすくなります。

スキルが乏しい際の代替業務

RPAには作業手順のテンプレートが内包されている場合が多く、プログラミング知識が乏しいスタッフでも利用しやすい点が特徴です。マクロやVBAを活用する場合に必要なスキルを習得するのは容易ではありませんが、RPAを使うことで現場スタッフでも自動化に取り組むことができるため、専門的なスキルがなくても導入しやすいという利点があります。

最後に

RPAは業務効率化を目指す現代の企業にとって強力なツールです。単純な繰り返し作業や定型業務を自動化することで、作業の正確性とスピードを向上させるだけでなく、人間がより付加価値の高い業務に集中できる環境を作ります。一方で、導入には管理体制の整備や適切な業務範囲の設定が求められます。また、RPAが得意とする分野に焦点を当て、課題を解決する明確な目標を持つことが重要です。成功事例を参考にしながら、効果的な導入計画を立てることが、最大の効果を引き出す鍵となります。

シェアをお願いします!

執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

目次