中国の汎用AIエージェントManus(マヌス)とは?

Manus(マヌス)とは、中国のスタートアップによって開発された自律型の汎用AIエージェントです。従来のチャットボットとは異なり、Manusは人間からの細かな指示を必要とせず、目標だけを伝えれば自らタスクを構造化して実行します。

旅行プランの作成やデータ分析、Web開発など、さまざまな業務を横断的に処理する能力を持っており、まるで有能な秘書のように業務を進めてくれます。また、外部ツールとの連携やリアルタイムでの処理の可視化にも対応しており、タスクの進行状況を確認しながら作業の調整ができます。

目次

Manusとは

Manus(マヌス)は、中国のスタートアップMonicaによって開発された自律型AIエージェントです。2025年3月6日に正式に公開され、発表直後から大きな注目を集めました。従来のチャットボットが質問に答えるだけの存在であったのに対し、Manusはユーザーの目標に応じて自ら思考し、計画を立て、実行まで担う設計となっています。旅行プランの作成やSNS分析、金融取引、リサーチ、購買など、複数のタスクを同時に処理できる点が大きな特徴です。

引用:Manusより

Manusは汎用AIアシスタントの性能を測定するGAIAベンチマークにおいて、OpenAIのDeep Researchを上回るスコアを記録しています。たとえば、レベル1の課題正答率ではManusが86.5%、OpenAIの同モデルは74.3%とされており、その性能の高さが数値としても示されています。

こうした高性能の背景には、開発者である季逸超(Ji Yichao)氏の構想があります。氏はManusを世界初の汎用AIエージェントと位置づけており、単なる会話ツールではなく、構想から実行までを一貫して担う存在だと語っています。

Manusのインターフェースは、左側にAIの思考プロセス、右側に参照中のウェブページや作業内容が表示される構成となっており、AIがどのように判断し行動しているのかをユーザーが視覚的に確認できる設計になっています。透明性の高いこの構造により、ユーザーは必要に応じて追加の指示を与えることもできます。

このように、Manusは単なるチャットボットの枠を超え、自律的に業務を遂行するAIエージェントとして、今後の活用が期待されています。

Manusの利用条件と権利範囲

Manusはクラウドサービスとして提供されており、ソフトウェア自体は一般に公開されていません。そのためオープンソースライセンスは存在せず、ユーザーは定められた規約に従ってサービスを利用する形式です。

利用規約では、18歳以上であることや、違法または不適切な目的で利用しないことなどの基本条件が定められています。商用利用や特許使用は認められていますが、ソフトウェアの改変や再配布は禁止されています。また、私的利用に関しては制限がありますが、生成された成果物の使用は可能とされています。

Manusで生成された文章や画像、レポートなどの成果物は、ユーザーにすべての権利が帰属することが明記されています。つまり、Manus側が著作権などの権利を主張することはなく、ユーザーは成果物を自由に利用・公開できます。

一方で、Manusの機能を第三者向けに転用する行為は禁止されています。たとえば、自身のアカウントを使って代行サービスを提供したり、Manusを別のアプリケーションに組み込んで商用利用することは、事前の許可なく行うことができません。利用者には、成果物の扱いに加えて、利用方法の責任が求められます。

Manusと他のAIエージェントの違い

従来のチャットボットは、ユーザーの問いかけに反応する受動的な仕組みでしたが、Manusは目標を与えるだけで自ら手順を考え、タスクを実行します。情報を返す辞書のような存在ではなく、目的に向かって動いてくれる実務アシスタントに近い性質があります。

RPAのような業務自動化ツールでは、あらかじめ決められた手順やルールを人間が設計する必要があります。一方、Manusは人間が詳細を設定しなくても、AIが自律的に必要なステップを導き出して行動するという点で大きく異なります。

近年はAutoGPTのような自律型AIエージェントも登場していますが、Manusは外部サービスとの連携性や総合処理能力において優れていると評価されています。タスクの達成率や処理速度が高く、実用性の面で注目されています。ただし、現時点ではベータ版であるため、バグやパフォーマンスのばらつきが一部報告されています。

Manusの強み

Manusの最大の強みは、高い自律性と汎用性にあります。他のAIエージェントが細かな指示を必要とするのに対し、Manusは大まかな目的を与えるだけで、タスクを自律的に構造化し、情報収集・分析・実行までを一貫して行います。開発チームはManusをアイデアを具体的な行動に変えるAIと位置づけており、対話型AIや定型業務の自動化ツールを超える存在として設計されています。

アプリを横断して自動操作できる

Manusはブラウザや表計算ソフトなどの外部ツールを直接操作できます。たとえば、複数のWebサイトからデータを収集し、Excelで集計・可視化するといった一連の作業を自動で実行できます。アプリケーションを切り替える必要がなく、すべてを1つのAIエージェントが引き受けるため、手作業の煩雑さを大幅に削減できます。

実行状況をリアルタイムで可視化

Manusは、現在行っている作業や判断プロセスを画面上に表示します。AIがどのように情報を処理しているかを視覚的に把握できるため、ユーザーは安心してタスクを任せることができ、必要に応じて途中で指示を加えることも可能です。人間とAIの共同作業を円滑に進める仕組みが整っています。

PCを閉じても作業が続く

Manusはクラウド上でタスクを非同期に実行するため、PCの電源を切った後でも処理は継続され、完了後には結果が通知されます。スクレイピングや大規模データの分析といった長時間の処理も、物理的な制約を受けずに任せられます。

複雑な依頼にも対応できる自律性

Manusは、単一の依頼から複雑なタスクを分解し、順序立てて実行できます。たとえば「旅行の計画を立ててほしい」という指示から、目的地のリサーチ、交通手段の選定、日程作成、宿泊施設の提案までを一括でこなします。人間による細かな指示を必要とせず、目標達成までを自律的に担う点が特徴です。

最新情報に基づく検索ができる

anusには高度なWeb検索機能が備わっており、最新のデータに基づいてタスクを進めることが可能です。生成される文書には参照元の情報が付記されるため、ファクトチェックの手間が軽減され、正確性の高いアウトプットを得ることができます。

開発作業も効率化できる

ManusはLinuxコマンドやシェルスクリプトの実行、HTML・CSS・JavaScriptの生成、ローカル環境でのWeb公開に対応しています。また、Visual Studio Codeの操作も自動化されており、開発者が行うコード整形やデバッグも一貫してサポートしているため、エンジニアの作業負担が軽減され、生産性が向上します。

大量データの高速処理と可視化に強い

Manusは、大量のデータを高速で処理し、視覚的に整理して提示できます。市場データから異常値やトレンドを抽出したり、数百件の応募者情報を分析して条件に合致する候補者をランキング形式で提示したりすることが可能です。本来、専門チームが数日かけて対応するような業務ですが、Manusは短時間で完了させることができます。

Manusの料金

プラン名BasicPlusPro
料金月16ドル月33ドル月166ドル
月間クレジット数1,900クレジット3,900クレジット19,900クレジット
同時実行タスク数2個2個5個
特徴長文対応、専用リソース、高負荷時も優先処理Basicの上位互換同時実行数拡張、ヘビーユーザー・業務向け

参考:https://manus.im/home

すべてのプランで、毎日300クレジットが自動で付与されます。各プランでは専用リソースの利用、長文コンテキストの対応、高負荷時の優先アクセスが標準搭載されており、利用目的やタスクの頻度に応じて、最適なプランを選ぶことができます。日常的な業務でManusを活用する場合は、Plus以上のプランが推奨されます。

クレジットは、AIによる出力の長さや処理内容の複雑さに応じて消費されます。無料プランは、基本機能を試したい方や使用頻度が低い方に向いており、有料プランはManusを日常的に活用するユーザーや、複雑なタスクを頻繁に処理したいユーザーに適しています。特にProプランは、高度なタスクを複数同時に処理できるため、ビジネス用途にも対応します。

言語モデルのトークン処理(タスクの計画や意思決定、出力生成時)、仮想マシンによる実行環境でのコード実行やブラウザ操作、外部APIを用いたサービス連携にもクレジットが使われます。

たとえば、NBA選手の得点効率をグラフ化する標準的なタスクは約15分で200クレジット程度、Webページ制作は約25分で360クレジット、天文イベントの案内アプリ開発のような複雑なタスクでは約80分で900クレジットが消費されます。使用初期は比較的軽い作業から始めることで、効率よくクレジットの消費バランスを把握できます。

参考:クレジットとは(Manus)

Manusの使い方

Manusは、公式サイトからアクセスでき、メールアドレスを登録するだけで無料で利用を始めることができます。無料プランでも一定の回数まで利用可能で、試用や機能の確認に適しています。

Manusはチャットボックス形式で操作でき、達成したい目的や指示を自然な言葉で入力するだけでタスクの実行が始まります。作業が進行する様子はリアルタイムで表示され、情報収集や分析、出力の各ステップを画面上で確認できるため、処理内容を視覚的に把握しながら、必要に応じて途中で指示を加えることも可能です。

業務での活用と商用利用

Manusは個人利用に限らず、企業による商用利用にも対応しています。データ分析、市場調査、レポート作成、コンテンツ生成といった業務を自動化し、業務効率の向上やコスト削減を図る手段として活用されています。

企業での導入にあたっては、利用規約に定められた禁止事項や制限を事前に確認する必要があります。とくに再配布や代理提供に関する条件は厳密に定められているため、正式な業務利用の前には利用規約を参照し、内容を十分に確認することが推奨されます。

Manusの注意点

Manusは高機能なAIエージェントですが、利用にあたってはいくつかの注意点があります。生成される情報の正確性、データの取り扱い、サービスの提供状況といった側面について、事前に理解しておくことが重要です。

出力精度には限界がある

Manusに搭載されている生成AIは、高度な自然言語処理や情報分析を行える一方で、事実と異なる内容をもっともらしく出力することがあります。このような誤情報はハルシネーションとも呼ばれ、内容をそのまま信用すると誤った判断につながる恐れがあります。

開発元も、AI出力にはエラーが含まれる可能性があることを認めており、特に重要なレポートや判断材料として使用する際には、人間が内容を精査することが前提とされています。Manusは優れた補助ツールですが、最終的な判断は人が行うという意識が必要です。

データの取り扱いに注意が必要

Manusを利用する際には、指示や入力情報がクラウド上に送信され、処理されます。入力データは匿名加工されたうえでサービス改善などに利用されることが規約に明記されており、機密性の高い業務データや個人情報を扱う際には慎重な配慮が求められます。

また、所有構造やデータの保管場所に関する透明性が十分とは言えず、中国のスタートアップによる運営である点から、情報の取り扱いについて懸念を示す声もあります。AIセキュリティやガバナンスの観点からも、取り扱う情報の種類を精査したうえで利用範囲を検討する必要があります。

企業による本格導入を検討する場合には、機密情報を扱わない限定利用や専用インフラ上で動作するプライベート版の導入可否について事前に確認することが推奨されます。

サービスの安定性と提供条件に制限がある

Manusは現在、招待制のベータ版として提供されており、すぐに自由に利用できるわけではありません。アクセス枠には制限があり、招待コードを取得できるまで時間がかかる場合があります。

また、Manusは小規模なスタートアップによる運営であり、サーバーの処理能力やシステムの安定性には限りがあります。実際、アクセス集中時にはレスポンス遅延や一時的な接続不良が発生した事例もあります。正式サービスとしての継続性も不透明であるため、導入にあたっては段階的な試験運用を行いながら、最新の公式情報を随時確認することが望まれます。

最後に

Manusは、単なる対話型AIではなく、指示を受けたあとの実行までを担う自律型エージェントです。複雑な処理を分解し、順を追って完了させる構造により、従来のチャットボットやRPAツールにはない柔軟性と汎用性を備えています。業務での活用にも対応しており、データ収集、レポート作成、開発支援といった場面で実用性を発揮しています。

一方で、出力の正確性には限界があり、最終判断は人間の確認が前提となります。また、クラウド型であることから情報の取扱いにも注意が必要です。サービスはまだベータ版の段階にあり、今後の機能拡張や安定運用に期待が寄せられています。利用にあたっては、最新の情報と利用条件を確認しながら段階的に活用する姿勢が求められます。

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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