Dify(ディファイ)とは?無料で使えるAI開発ツールの特徴と注意点

Difyとは、生成AIを活用したアプリケーションをノーコードで開発できるプラットフォームを指します。直感的な操作性と柔軟な拡張性を兼ね備えており、エンジニアでなくても本格的なAIアプリを構築できる点が特徴です。テンプレート機能やスタジオ、ナレッジ登録、外部連携などの機能が充実しており、業務に必要なチャットボットやエージェントも簡単に開発できます。

また、RAGや複数のAIモデルとの連携にも対応し、業務の自動化や効率化を実現する土台として活用が進んでいます。オープンソースであるため導入のハードルが低く、個人から企業まで多様なニーズに応える設計になっています。Difyの仕組みや機能、導入時のポイントを理解することで、自社に合ったAI活用の第一歩を踏み出せます。

目次

Difyとは

Dify(ディファイ)とは、大規模言語モデルを活用して、ノーコードでAIアプリを開発できるオープンソースプラットフォームです。直感的な操作だけで、チャットボットやAIエージェント、テキスト生成ツールなどの高度なアプリケーションを作成できます。特に専門知識を持たないユーザーでも使いやすく設計されており、業務部門や企画担当者も開発に参加しやすい構造です。

Difyという名前は、定義を意味するDefineと、改良を意味するModifyを組み合わせた造語で、アプリを継続的に改善しながら構築していくという思想が込められています。日本語にも対応しており、誰でも利用できる汎用性の高い開発基盤といえます。

操作はブロックをつなぐ形式で行い、プログラムコードを書く必要がなく、視覚的に処理の流れを構築できます。RAG(検索拡張生成)エンジンにも対応しており、AIエージェントや複雑なワークフローも効率的に組み立てられます。生成AIを活用したアプリ開発のハードルを下げ、非エンジニア層のAI活用を可能にする点が大きな特徴です。

Difyの主な機能

Difyには以下の4つの主要機能があります。

用途に応じたテンプレートの活用Difyでは、目的に合ったアプリテンプレートを検索・利用できる機能が提供されています。テンプレートはそのまま使うことも、カスタマイズして独自のアプリに仕上げることも可能です。初めて使う場合はテンプレートの確認から始めるのが効率的です。
アプリ構築・管理を行うスタジオ機能スタジオでは、アプリの構築や管理を行うことができます。テンプレートをベースに編集したり、ゼロから独自にアプリを組み立てたりと、柔軟に開発できます。Difyの中心となる機能です。
ナレッジの登録と管理ナレッジは、RAGなどで利用するデータを登録・管理する機能です。PDFやExcelなどの社内文書をアップロードすることで、AIの知識ベースとして活用できます。WEBページやNotionなどにも対応しており、ラベルやタグ付けにより検索性も高まります。アプリの精度を高めるには、ナレッジの情報設計が重要です。
外部ツールとの連携機能Difyは外部のサービスとも連携できます。たとえばWikipediaからの情報取得や画像生成AIとの連携、SlackやGoogleサービスとの接続などが可能です。ツール連携によって、実用性の高いアプリケーションを簡単に構築できます。

ビジネス活用の具体例

Difyを使って開発できるアプリは以下の4種類に分類されます。

  1. チャットボット:ナレッジベースに登録した社内情報を活用し、従業員が必要な情報にすぐアクセスできるようにします。
  2. テキスト生成:報道資料やメール作成など、日常的な文章作成業務をAIがサポートします。業界特有の語彙や文体にも対応できます。
  3. エージェント:複雑な目標を分解し、自動でツールを操作して処理を完了させる自律型アプリです。
  4. ワークフロー:翻訳、分析、通知などの一連の業務処理をAIが自動化し、業務全体の効率を高めます。

Difyの類似ツール

Difyに似たノーコード系のツールも多く登場しています。代表的なものを紹介します。

GPTs(ChatGPTカスタマイズ機能)OpenAIが提供するGPTsでは、ChatGPTを用途に応じてカスタマイズできます。ノーコードで構築でき、有料プランに加入すればGPT Storeでの共有や収益化も可能です。
LangChain(LLM活用フレームワーク)LangChainは、複数のLLMや外部機能を組み合わせてアプリを構築するフレームワークです。情報収集と要約を異なるモデルに任せるなど、柔軟な構成が可能です。
n8n(ローコード自動化ツール)n8nは、既存のサービスを組み合わせて業務フローを自動化できるツールです。たとえば、進捗確認のやり取りをチャットで自動要約するようなアプリも簡単に作成できます。
Zapier(汎用ワークフロー構築ツール)Zapierは、Slack、Gmail、スプレッドシートなど5,000以上のアプリと連携し、業務を自動化するツールです。プログラミング不要で操作も簡単なため、多くの企業でルーティン作業の効率化に活用されています。

Difyの特徴

Difyは、誰でも簡単にAIアプリケーションを開発・運用できるノーコード型のオープンソースプラットフォームです。直感的な操作性や豊富なモデルとの連携、柔軟な環境対応など、多くの特徴を備えており、企業・個人問わず広く利用が進んでいます。

オープンソースで柔軟かつ安心して使える

DifyはOSS(オープンソースソフトウェア)として無料で提供されており、誰でも自由に利用・改良できます。基本機能はすぐに使い始められ、Web版も公開されています。運営はLangGenius社が行っており、米国法とデータポリシーに準拠した体制が整っています。

開発コミュニティも活発で、GitHub経由でのフィードバックや改善提案が反映されやすく、更新頻度も高いです。複数のLLM(GPT-4o、Claude 3、Llamaなど)に対応しており、アプリごとに最適なモデルを選択できます。

誰でも扱える直感的な操作性

Difyは、非エンジニアでも扱えるよう、ブロックを視覚的に接続するだけでアプリを構築できるインターフェースを備えています。処理の流れも視覚的に把握でき、修正や調整も容易です。プログラミング経験がなくても複雑な処理を伴うアプリを作成でき、PythonやJSONに詳しければさらに活用範囲が広がります。

詳細なマニュアルやサポートも整っており、AI導入が初めての企業にも適した設計です。

多様なAIモデルと簡単に連携可能

OpenAIをはじめとする主要なAIモデルプロバイダーと統合可能で、自社の目的に合ったモデルを選びやすい点も魅力です。自然言語処理や画像認識など、業務に応じて最適なモデルを導入できます。

RAGによる外部データ活用が可能

Difyは、RAG(検索拡張生成)をデフォルト機能として提供しています。自社データや外部情報をLLMと連携させ、関連性の高い情報に基づく応答生成を実現できます。専門知識がなくても高度なRAG機能を活用でき、特定タスクへの最適化やチューニングも容易です。

組み込みツールによる開発効率化

データの前処理やモデルの評価などに対応する各種ツールが用意されており、開発作業を効率化できます。アプリケーションのコア開発に集中できるため、短期間で高品質なAIソリューションを提供することが可能です。

無料での利用が可能

基本機能を無料で利用できるプランが提供されており、試験導入にも適しています。まずは小規模プロジェクトで試し、必要に応じて有料プランへ移行することで、初期費用を抑えながら段階的にAI活用を進められます。

商用利用にも対応

Difyは商用利用も可能です。ただし一部制限があるため、ライセンス条件の確認が必要です。事業用途でも安心して導入できる柔軟なライセンス体系です。

オンプレミス環境でも導入可能

完全オンプレミスでの運用にも対応しており、機密性の高いデータを扱う環境でも安全に利用できます。クラウド依存を避け、ローカル環境での生成AI活用が可能です。データの所在が明確になり、コンプライアンスやガバナンスの面でも有利です。

多様なツールに対応したテンプレートが充実

GPT-4oやGemini、Llamaなど多数のLLMに対応したテンプレートが用意されており、ゼロから構築せずとも容易にアプリを作成できます。テンプレートをもとに用途に合わせたチューニングが可能で、初心者がつまずきやすいポイントも回避できます。

さらに、Web検索ツールやNotionとの連携機能も備えており、業務環境へのスムーズな統合が実現できます。テンプレートはそのまま使うこともカスタマイズすることも容易で、利用者のレベルや目的に応じた柔軟な構築が可能です。

Difyを使うメリット

Difyは、生成AIアプリケーションをノーコードで開発できるプラットフォームとして、多くの実用的な利点を提供しています。コスト、言語対応、開発自由度、公開性の4つの観点から、その導入価値が高く評価されています。

コストを抑えて導入できる

Difyはオープンソースとして提供されており、基本機能を無料で利用できます。多くのAIツールが高額なライセンス費用を必要とする中で、初期コストを抑えて導入できる点は大きな魅力です。小規模なプロジェクトや予算に制限のある環境でも活用しやすく、まずは試験的に使ってみたいというニーズにも応えられます。

ただし、使用量や利用機能によっては、無料枠を超えるケースもあるため、継続的な利用や大規模運用を検討する際には、有料プランの選択も視野に入れる必要があります。導入初期は無料で始められる柔軟さがある一方で、実運用では利用状況に応じたプラン設計が求められます。

日本語での開発・操作が可能

Difyは日本語に対応しており、英語中心で設計されたツールに比べて操作がしやすい点も大きな利点です。多くの海外製AIツールは英語を前提としているため、国内ユーザーにとって使いにくいことがありますが、Difyでは言語の障壁を感じることなくスムーズに利用できます。導入や運用にかかるストレスが少なく、業務への定着も促進されます。

高度なAIアプリもノーコードで構築可能

Difyは、自然言語処理や画像認識などの高度なAI技術を活用したアプリケーションの開発にも対応しています。従来であれば専門知識が必要だった処理も、視覚的な操作のみで構築できるため、開発の敷居が大幅に下がります。複雑な処理を含む業務向けのアプリでも対応可能で、実務に直結するAI活用を推進できます。

開発したアプリを簡単に共有・公開できる

Difyで開発したアプリは、Webやメール、SNSなどを通じて簡単に他者に公開できます。共有の手間が少なく、他のユーザーとの情報交換やフィードバック収集もスムーズです。これにより、アプリケーションの改善や機能追加のヒントを得やすくなり、継続的な品質向上にもつながります。作ったものをすぐに試してもらえる環境は、開発のスピードと質の両面において有利です。

Difyの料金体系

Difyは利用目的や規模に応じて複数のプランが用意されています。

種別プラン名価格主な用途・特徴
クラウド版Sandbox無料小規模・個人利用向け。基本機能は使用可能だが、リクエスト数やストレージに制限あり。
クラウド版Professional月額59ドル商用・チーム利用向け。機能・サポートが強化されたプラン。
クラウド版Team月額159ドル複数メンバーによる共同開発を想定したチーム向けプラン。管理機能も充実。
セルフホスト版Community無料OSSとして提供。ユーザー数やアプリ数に制限なし。Docker等による環境構築が必要。
セルフホスト版Premium従量課金高機能版。AWS Marketplaceで提供されており、導入が容易。
セルフホスト版Enterpriseカスタム高度な機能を必要とする企業向けプラン。

無料プランでも基本的な機能は十分利用でき、リクエスト数やストレージ容量の制限内であれば、試験運用にも適しています。継続的な開発やチーム利用には、有料プランの導入が推奨されます。

参考:https://dify.ai/jp/pricing

Difyを導入する際の注意点

Difyは便利で柔軟な生成AI開発基盤ですが、導入にあたっては注意点もあります。無料プランの範囲、商用利用の条件、サポート体制、セキュリティ対応、技術的な前提など、運用環境に応じた確認が必要です。

無料プランには制限がある

Difyのクラウド版には無料で使えるSandboxプランがありますが、利用回数やアプリ数、チームメンバー数に制限があります。本格的な開発や継続的な運用を想定している場合は、有料プランへの移行を前提に考える必要があります。

商用利用には条件がある

Difyはオープンソースとして提供されており、基本的に商用利用が可能です。ただし、以下のような場合は商用ライセンスが必要になります。

・マルチテナント型SaaSとしてサービスを提供する場合

・ロゴや著作権表示を削除または変更する場合

対象となる場合は、Difyのビジネスチームへの確認が求められます。利用規約の詳細は公式サイトで確認する必要があります。

サポートはコミュニティベース

Difyはオープンソースプロジェクトのため、専用の問い合わせ窓口やチャットサポートは用意されていません。トラブル対応はGitHubやコミュニティでのやりとりが中心となります。導入や運用にあたっては、外部支援サービスの検討も選択肢に含めると安心です。

APIキーとセキュリティ管理が必須

Difyで外部のLLMを利用するにはAPIキーの設定が必要です。このキーは不正利用や漏洩を防ぐため、環境変数での安全な保存、アクセス制限、定期的な更新など、厳格なセキュリティ管理が求められます。ドキュメント連携や外部ツールとの連携時には、社内ルールに基づいた運用が不可欠です。

ローカル構築には技術知識が必要

Difyはクラウドだけでなくローカル環境でも構築できますが、その場合はDockerやコマンドライン操作など一定の技術スキルが必要です。自社内で完結した環境を求める場合には、技術者の配置や外部ベンダーの支援が前提となります。

最後に

Difyは、生成AIを業務に取り入れたい企業や個人にとって、柔軟かつ低コストで始められる有力な選択肢です。ノーコードでのアプリ構築、RAGによる外部情報活用、複数モデルとの連携、オンプレミス運用への対応など、幅広い機能を備えています。さらに、オープンソースとしての安心感や、日本語対応の使いやすさも評価されています。

テンプレートの活用や外部ツールとの連携を通じて、業務に直結するAI活用が実現できる点も魅力です。一方で、ライセンス条件や無料プランの制限、セキュリティ面での配慮は欠かせません。導入前に自社の目的や技術体制を踏まえたうえで適切なプランを選定し、実運用に耐えうる体制を整えることが重要です。Difyを活用することで、より実践的な生成AIの導入が可能になります。

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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