畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とは? 仕組みと導入時の注意点

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とは?

畳み込みニューラルネットワークとは、ディープラーニングの一種であり、画像認識に特化した技術です。複雑な画像データを処理し、特定の特徴を自動的に抽出することで、従来の手法では難しかった高精度な認識を可能にします。特徴的な構造として、畳み込み層、プーリング層、全結合層が挙げられ、それぞれが異なる役割を持ちながら協調し、画像内の重要な情報を効率的に捉えることにより、顔認証や自動運転、医療画像診断など、多岐にわたる分野で活用が進んでいます。ただし、導入には計算コストやブラックボックス化といった課題も伴うため、慎重な検討が必要です。

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目次

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とは

畳み込みニューラルネットワーク

畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)とは、画像認識において重要なディープラーニングのアルゴリズムです。入力された画像から特徴を抽出し、それらを基に分類や識別を行うため、多層構造を持つディープニューラルネットワーク(DNN)の1つとして位置づけられています。

人間の脳神経を模したニューラルネットワークを基に、CNNは畳み込み層を中心に構成されています。この畳み込み層では画像内の局所的な特徴を抽出することで、従来の方法では困難だった複雑な画像の解析を可能にしました。また、プーリング層を加えることでデータ量を圧縮し、効率的な処理を実現しています。

CNNが特に優れているのは一般物体認識と呼ばれるタスクで、例えば道路の画像から車や人、信号機などを識別する場面で高い精度を発揮します。この技術は従来の手法では達成できなかったレベルの認識を可能にし、画像認識の分野で革命的な進歩をもたらしました。

特徴的な要素の1つとして、重み共有があります。畳み込み層で使われるフィルタ(局所的な特徴を抽出を目的として演算用の行列)を画像全体で共有することで、学習すべきパラメータの数を削減し、学習効率を向上させることにより、異なる位置にある同じ特徴を同一のフィルターで認識可能になります。

CNNとDNN(ディープニューラルネットワーク)の違いも重要です。まずCNNはDNNの中の一種です。DNNは音声認識やテキスト分析、レコメンドシステムといった汎用的なタスクに強みを持つ一方で、CNNは画像認識に特化しています。CNNでは畳み込み層とプーリング層を活用することで、画像から自動的に特徴を抽出し、階層的に学習します。

また、CNNは他の手法とも組み合わせられます。例えば、リカレントニューラルネットワーク(RNN)やLSTMと連携することで、時系列データを含むタスクにも対応可能です。RNNは連続するデータを扱うのに適しており、音声認識や自然言語処理で広く利用されていますが、長い時系列データの学習には課題がありました。その解決策としてLSTMが登場し、長期的な依存関係を考慮した学習を可能にしています。

畳み込みニューラルネットワークの仕組み

畳み込みニューラルネットワーク

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の仕組みを理解するには、主に畳み込み層、プーリング層、全結合層という3つの層の役割を把握することが重要です。それぞれの層が異なる役割を持ち、組み合わせることで画像認識を実現しています。3つの層が連携することで、CNNは入力画像から効率的に特徴を抽出し、分類や予測を高い精度で行うことが可能になります。

畳み込み層

畳み込み

畳み込み層の役割は画像の局所的な特徴を抽出することです。画像には隣接するピクセル間の関係性が含まれており、エッジ(輝度や色の急激な変化)や色の変化といった特徴を見つけることで情報を効率的に圧縮します。畳み込み処理ではフィルタと呼ばれるパターン認識ツールを使い、画像上をスライドしながら局所的な一致度を計算することで重要な形状や模様が強調され、特徴マップとして出力されます。

特徴マップは各フィルタが異なる特徴を抽出するために複数生成され、次の層に渡されます。この過程は、情報量を適度に減少させつつ、識別に必要な情報を保持する重要なステップとなります。

プーリング層

プーリング

プーリング層は抽出した特徴の重要性を保ちながら情報をさらに圧縮します。この層の主な役割は移動不変性を与えることで、画像の平行移動や回転といった変化に対しても頑健性を持たせることです(画像内のオブジェクト位置が変化しても、CNNがオブジェクトを正しく認識できるようにする)。

プーリングにはMAXプーリングと平均プーリングなどの方法があります。MAXプーリングでは指定された領域内の最大値を取り出し、重要な特徴を維持しながらデータサイズを縮小することで位置に依存しない情報の抽出が可能になり、モデルの汎化性能が向上します。

全結合層

全結合層はそれまでの層で抽出された特徴を基に、最終的な分類や予測を行う役割を担います。全結合層では特徴量がすべてのニューロンに接続され、それぞれのクラスに対してスコアを出力することで入力データがどのクラスに属するかが決定されます。

全結合層の出力は最終的な予測や分類結果として利用されます。複数の層を重ねることで、より複雑な特徴の組み合わせを学習し、高度な分類タスクを実現できます。

畳み込みニューラルネットワークの活用例

顔認証

CNNは高い精度で顔を識別するため顔認証技術に広く活用されています。スマートフォンやパソコンのロック解除、無人店舗での個人認証、大学での出欠管理など、さまざまなシーンで日常生活を便利にしています。顔認証は目や鼻、口など顔の特徴を基に個人を特定しています。大量の顔データを学習させることで、新しい画像でも正確な判別が可能となり、防犯やセキュリティ分野でも重要な役割を果たしています。

自動運転

自動運転技術にもCNNが欠かせません。車載カメラから取得した画像データを用いて、道路標識、信号、人、車などの物体をリアルタイムで認識し、適切な判断をサポートします。高速で走行する車両が安全に運転するためには、周囲の環境を瞬時に理解し、障害物や危険を正確に把握することが必要です。CNNの画像認識技術は、このような複雑なタスクにおいて極めて重要な役割を担っています。

画像診断

医療分野では画像診断における精度向上にCNNが活用されています。CTやMRIなどの医用画像から病気の特徴を抽出し、早期発見や診断の精度向上に寄与しています。CNNを用いることで、人間の目では見落とされやすい微細な異常を検出することも可能です。この技術は医師の負担を軽減し、患者への負担も最小限に抑えることが期待されています。

画像分類

画像分類は入力された画像を特定のカテゴリーに分類する技術です。CNNを利用することで、画像から特徴を自動で抽出し、果物や動物、製品などを正確に識別できます。例えば、ネコ、イヌ、ウサギといった動物の画像分類を行う場合、大量の学習データを基に新たな動物画像を高精度で分類することが可能です。

画像生成

CNNは画像生成の分野にも応用されています。画像生成とはAIが新しい画像を作り出す技術で、Webデザイン、ゲーム開発、商品写真の生成、芸術分野でも活用されています。AIが学習したデータを基に、まったく新しい画像を創出することで、従来の制作方法を大きく変える可能性を秘めています。生成AIの分野でもCNNは基盤技術として重要な位置を占めています。

畳み込みニューラルネットワーク導入時の注意点

ブラックボックス化

CNNを含むディープラーニングのモデルは膨大なパラメータと複雑な計算を基に推論を行うため、なぜその結果が得られたのかを説明するのが困難です。内部処理がブラックボックス化する問題は、特に実用化の場面で課題となります。例えば、医療や金融の分野では推論結果の根拠を明示する必要があるため、単に高い精度を持つだけでは導入が難しいことが考えられます。説明可能性を確保するための工夫や補助的なモデルの利用が求められることもありえます。

膨大なデータと計算コスト

CNNは高い性能を発揮する一方で膨大な学習データと計算資源を必要とします。十分なデータを準備するだけでなく、学習には高性能なマシンが求められるため、導入にはコストがかかります。また、ディープラーニングの利点として、特徴量を自動で抽出できる点がありますが、計算量が増大し、専用のハードウェアやクラウドサービスを利用する必要が出てくることもあります。導入前にはCNNを使用することが本当に必要か、他の方法で十分な結果が得られないかを慎重に検討することが重要です。

技術的な問題

CNNはノイズに対する脆弱性やデータ圧縮時の情報喪失といった技術的な課題も抱えています。わずかなノイズが画像に加わるだけで、全く異なる結果を出力することがあります。特に自動運転や医療分野のような安全性が求められる場面で重大です。また、プーリング層による位置情報の削減が精度に影響を与える場合もあります。

これらの課題を克服するためにResNet(レジネット:画像認識分野で用いられるディープラーニングの手法の1つ)やCapsule Network(カプセルネットワーク:上下が逆になったり、回転した入力画像に対処するために発明された新たしいニューラルネットワーク)などの改良モデルの導入が検討されることがあります。

最後に

畳み込みニューラルネットワークは、画像認識において非常に高い性能を発揮し、さまざまな分野での応用が進んでいます。主要な構成要素である畳み込み層、プーリング層、全結合層が連携することで、画像内の特徴を効率的に抽出し、分類や予測を実現します。一方で、大量のデータや計算資源を必要とし、説明可能性の確保やノイズへの耐性といった課題も存在します。これらの課題を解決するための改良モデルも登場しており、今後のさらなる技術進化が期待されています。導入に際しては、これらのポイントを考慮しながら最適な活用法を見出すことが重要です。

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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