Amazon Bedrockとは、AWSが提供する生成AIに特化したサービスで、2023年9月にリリースされました。複数の大手AI企業が提供する基盤モデルをAPI経由で利用でき、テキスト生成や画像生成、チャットボットの構築など、幅広い業務に対応できるのが特長です。また、サーバーレスで提供されているため、インフラの構築や管理が不要で、専門的な知識がなくても手軽に導入できます。用途に応じたモデルの選択やカスタマイズが可能で、セキュリティやコスト面にも配慮されているため、企業が生成AIを実用的に活用するうえで有力な選択肢となっています。
Amazon Bedrockとは
Amazon Bedrockとは、AWSが2023年9月に提供を開始した、生成AIアプリケーション開発に特化したフルマネージドサービスです。インフラの構築や運用管理が不要なサーバーレス設計で、企業が迅速に生成AIを導入できる環境を提供しています。
Amazon Bedrockでは、AnthropicのClaude、MetaのLlama、Stability AIのStable Diffusionなど、複数の大手AI企業が提供する基盤モデルを、単一のAPI経由で選択・利用することで、文章生成や要約、検索、チャットボット構築、画像生成など、幅広い機能を業務に取り入れることが可能になります。
特に注目されているのは、目的や用途に応じて最適な基盤モデルを柔軟に選択できる点です。モデルによっては多言語対応や、テキストからの画像生成に対応しているものもあり、企業ごとのニーズに合わせた生成AIの活用が実現できます。
活用例と機能、セキュリティ面の特長
Amazon Bedrockでは、以下のような生成AIの活用が可能です。
- テキスト生成:ブログやSNS投稿、製品説明文などの自動作成
- テキスト要約:論文、レポート、長文記事などからの重要ポイント抽出
- 画像生成:広告やプレゼン資料用の画像やアニメーションの生成
- テキスト・画像検索:社内文書やナレッジベースの横断検索やレコメンド提案
- バーチャルアシスタント:自動分類、対話型Q&A、問い合わせ対応などの業務自動化
上記の機能は、インスタンスを持つ必要もなく、APIを呼び出すだけで利用できます。自動スケーリングにも対応しており、利用量に応じてリソースが調整されるため、業務負荷が急増する状況にも柔軟に対応できます。
また、生成AIの導入において重要なデータ保護の観点でも、Amazon Bedrockは安心して利用できる仕組みを備えています。たとえば、基盤モデルのカスタマイズや、RAG(検索拡張生成)機能を用いたシステム構築を行った場合でも、ユーザーから入力されたデータがベースモデルの改善などに使われることはありません。情報漏洩のリスクを避けながら、安全な環境下で生成AI機能を活用できます。
Amazon Bedrockは、専門的なAI開発スキルがなくても、ビジネス現場での迅速な生成AI導入を実現し、アイデア創出、コンテンツ制作、業務効率化など、さまざまな価値創出を後押ししてくれる生成AIサービスといえます。
Amazon Bedrockの始め方
Amazon Bedrockにアクセスし、AWSマネジメントコンソールにサインインします。画面上部の検索バーに「Amazon Bedrock」と入力して検索し、表示されたページから、使用するリージョンを選択し、「Get started」をクリックすると、Bedrockの利用を開始できます。
Bedrockでは、利用したい基盤モデルを選択し、リクエストする必要があります。左側メニューの「Model access」を選択すると、現在のリージョンで使用可能な基盤モデル一覧が表示されます。
Amazon SageMakerとの違い
Amazon SageMakerは、AWSが提供するフルマネージド型の機械学習サービスで、モデルの構築、学習、チューニング、デプロイまでを一貫して行えるプラットフォームです。開発者やデータサイエンティストが、自社専用の機械学習モデルを効率的に開発・運用するための高度な機能が用意されています。
Amazon BedrockとAmazon SageMakerは、いずれもAWSが提供するAI関連サービスですが、目的や用途が大きく異なります。Bedrockは生成AIの活用に特化したサーバーレスのフルマネージドサービスで、APIを通じて即座に基盤モデルを利用できます。一方、SageMakerは独自の機械学習モデルを構築・学習・デプロイするための総合プラットフォームで、より柔軟かつ高度なモデル開発に対応しています。要件に応じて使い分ける、あるいは組み合わせて活用することが重要です。
Amazon Bedrockを利用するメリット
Amazon Bedrockは、企業が生成AIを活用するうえで多くの利点を提供します。複数の基盤モデルを用途に応じて選択・カスタマイズできる柔軟性に加え、セキュリティやコスト面、他サービスとの連携性にも優れています。
多様な基盤モデルを選択できる
Amazon BedrockではMeta LlamaやStability AIのStable Diffusionなど、複数の基盤モデルを用途に応じて選択できます。モデルごとに得意分野が異なり、テキスト生成、要約、画像生成、検索など、幅広い業務ニーズに対応できるのが特長です。1つのプラットフォーム上で複数のモデルを扱えるため、目的に応じた使い分けや機能の組み合わせも容易に行えます。
モデルのカスタマイズに対応している
提供されている基盤モデルは独自データを用いてチューニングすることも可能です。ファインチューニングを活用すれば、特定の業界や業務に特化した精度の高い出力が得られます。また、検索拡張生成(RAG)を組み合わせることで、社内に蓄積された文書やナレッジを参照しながらの回答生成も実現できます。こうした柔軟なカスタマイズにより、自社の業務に最適化された生成AIシステムを構築できます。
多様なシステムを構築できる
各モデルが持つ特性を活かすことで、テキストや画像の生成、要約、検索、バーチャルアシスタントなど、多機能なシステムを設計できます。目的に応じて適切なモデルを選び、必要に応じて複数の機能を組み合わせることで、柔軟性の高い構成を実現できます。さらに、他のAWSサービスと連携することで、より高度な処理や業務への展開も可能になります。
社内システムと連携した活用がしやすい
Amazon BedrockはAPI経由で利用できるため、既存の社内システムともスムーズに連携できます。たとえば、問い合わせ対応の自動化やデータ入力の支援など、業務の一部をエージェントとして自動化することで、作業負担の軽減や対応スピードの向上が期待できます。日常業務に自然に組み込める柔軟性も、導入のしやすさを後押しします。
インフラ管理の手間を削減できる
サーバーレスで提供されるBedrockは、インフラの構築や保守を自社で行う必要がなく、運用にかかる負担を大幅に軽減できます。また、基盤モデルをゼロから開発する必要がないため、初期コストも抑えられます。従量課金制や自動スケーリングにも対応しており、利用量に応じた柔軟な運用が可能です。
セキュリティ面でも安心して使える
生成AIの業務利用ではデータの扱いに対する不安がつきものですが、Amazon Bedrockでは入力されたデータがモデルの学習に使われることはありません。モデルはプライベート環境で運用され、外部に情報が共有されることもないため、機密性の高い業務にも安心して利用できます。閉域ネットワークでの運用にも対応しており、厳格なセキュリティ要件を持つ企業にも適しています。
他のAWSサービスと連携しやすい
Amazon Bedrockは、AWSの各種サービスと高い親和性を持っているため、既存のAWS環境と簡単に統合できます。たとえば、Amazon S3と連携して社内データを活用したAI開発を行ったり、LambdaやStep Functionsと組み合わせて自動処理を構築したりと、活用の幅が広がります。また、AWSの利用者は多く、導入事例や技術情報も豊富に存在するため、実装や運用時のサポートも得やすい環境です。
Amazon Bedrockを利用する際の注意点
Amazon Bedrockを利用する際は、プライバシーへの配慮やモデルの選定基準、パフォーマンスの最適化といった実務上の注意点を理解しておくことが重要です。適切な設定と運用により、安全かつ効率的に生成AIの活用を進めることができます。
データプライバシーの確保
Bedrockでは送信データがモデルの学習に使用されないため、企業の機密情報や個人情報も安全に取り扱えます。さらに、匿名化や仮名化を実施し、センシティブな情報は処理前に適切に保護することで、リスクをより低減できます。
データは必要な期間のみ保持し、自動削除機能やライフサイクルポリシーを活用して管理します。また、定期的な監査によって運用状況を確認し、第三者とのデータ共有時には契約で保護義務を明確にしておくことが重要です。VPCやプライベートエンドポイントを利用すれば、パブリックインターネットを経由せずに通信でき、より高いセキュリティを確保できます。
モデル選択のガイドラインの考え方
モデルを選ぶ際は、用途・性能・コスト・将来性を基準に検討します。テキスト生成にはClaude、画像生成にはStability AI、多言語処理にはAI21 LabsやCohereが適しています。技術文書やコード生成にはLlamaやMistralが有効です。高速性を求める場合はClaude Instant、精度重視ならClaudeや大規模モデルが候補になります。長文処理ではコンテキストウィンドウの大きさも確認が必要です。
コスト面では、トークン単価・利用頻度・予算のバランスを見て選定します。将来的に自社データでカスタマイズしたい場合や頻繁なアップデートが必要な場合は、その対応可否も考慮しましょう。
パフォーマンスチューニングの仕方
性能を最適化するには、軽量なモデルの選択や、プロンプトの簡素化が効果的です。不要な指示を省くだけでも応答時間が改善されます。バッチ処理やキャッシュの活用でリソースを効率化し、リアルタイム性が不要な処理は事前計算で負荷を軽減します。
Amazon Bedrockの料金体系
Amazon Bedrockの料金は、利用したトークン数やモデルの種類、使用方法によって異なります。基本はオンデマンド型で、使用した分だけ課金される仕組みです。モデルの選定や利用スタイルに応じて、最適な料金プランを選ぶことが重要です。
一例として、Amazon Novaモデル(東京リージョン)でテキスト生成、画像生成、動画生成を行った場合には次のような料金体系になります。
機能 | 単位 | 料金(USD) |
テキスト生成モデル | 1,000入力トークンあたり | 0.000042 |
テキスト生成モデル | 1,000出力トークンあたり | 0.000168 |
画像生成 | 1枚(最大 1024×1024 ピクセル) | 0.04 |
動画生成 | 1秒(720p、24fps) | 0.08 |
参照:https://aws.amazon.com/jp/bedrock/pricing/
最後に
Amazon Bedrockは、企業が生成AIを導入・活用するための基盤として、多くの魅力を備えたサービスです。なかでも、複数のモデルを用途に応じて柔軟に選べる点や自社データを活用したカスタマイズへの対応は、実用性の高い特長といえます。他のAWSサービスとの連携がしやすく、インフラ管理の手間もかからないため、スムーズな運用が可能です。料金体系も明確で、セキュリティ面でも信頼性が高く、幅広いビジネスシーンで安心して活用できます。今後さらに進化が期待される生成AI領域において、Bedrockはその中核を担う存在として注目されています。
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