第2回東京都AI戦略会議の議論を読み解く

第2回東京都AI戦略会議

東京都はAIの活用を加速させ、行政のデジタル化を推進するための「AI戦略策定」に向けた議論を本格化させています。2025年2月に開催された第2回東京都AI戦略会議では、AI戦略策定に向けて抽出された論点をもとに議論を開始しました。東京都のAI活用の方向性として東京都のフロントサービス(対都民)、バックオフィス(対役所)といった切り口から、都市運営の効率化と都民サービスの向上を目指すことが明示されました。これらを実現するためのインフラ、セキュリティ、人材などの論点についても議論が開始しています。

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第2回会議の内容

東京都AI戦略会議とは

東京都AI戦略会議は、都の行政や都市運営におけるAIの活用を推進するための重要な場です。第2回の会議では、AI戦略策定に向けた論点整理と東京都におけるAI活用・開発の4原則について議論が交わされました。会議には、東京大学の松尾豊教授を座長とし、AI・デジタルガバナンスの専門家、企業のAI責任者、法律専門家などが委員として参加しました。さらに、都の副知事やデジタルサービス局の関係者も出席し、行政におけるAI活用の実務的な課題についても話し合われました。

東京都のAI活用の方向性

東京都は、行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)を「政策DX」と定義し、AIを活用することで都市運営の効率化と都民サービスの向上を図ることを目指しています。具体的な活用分野として、フロントサービスにおけるAIの活用、バックオフィス業務の効率化、都民の意見を収集・分析するAIの導入、さらにはAI産業の発展を促すためのデータセンターの整備などが挙げられました。

特に、都民との関係を強化する「AIで聞く力」については、行政が都民の意見を的確に収集し、政策決定に生かすための仕組みを整えることが重要とされています。これには、生成AIを活用した次世代チャットボットの導入や、都民の声を分析し課題を抽出するシステムの構築が含まれます。これにより、行政の透明性を高め、都民と行政の距離を縮めることが期待されています。

また、「AIを作る力」の発展についても議論され、東京都はAI技術の開発支援やAI関連のスタートアップ企業の育成に取り組む方針を示しました。特に、大学や研究機関と連携し、データ活用の促進や人材育成を進めることで、東京をAI産業の中心地とすることが目指されています。

AI活用における信頼性とガバナンス

AIの活用に際しては、都民の信頼を得ることが不可欠であり、そのためのルール整備やガバナンスが重要となります。議論では、AIの意思決定プロセスを透明化すること、誤った判断が行われた際には人間が介入できるフェールセーフの仕組みを整備すること、技術進展に応じたルールの定期的な更新が求められることが確認されました。AIの誤用リスクを抑えながら、都民が安心して利用できるシステム構築が求められています。

教育・医療分野でのAI活用の可能性

教育と医療の分野では、AIの活用が特に大きな影響を与えると考えられています。教育分野では、チャットGPTなどを活用したAIチューターの導入が議論され、アメリカのカーンアカデミーによるAI活用型教育プログラムが参考例として紹介されました。特に、AIが即座に解答を提示するのではなく、対話を通じて生徒の思考力を伸ばす仕組みの必要性が強調されました。

医療・福祉分野では、AIを活用したメンタルヘルス支援や、患者データの分析による診断支援、介護現場でのAI活用による負担軽減が議論の対象となりました。AIの活用によって、教育や医療の質が向上し、より多くの人に最適なサービスを提供できる可能性が示されています。

AIとデータセンター (東京都のインフラ戦略)

東京都は、AI推進のために安定したインフラの整備が不可欠であり、特にデータセンターの設置が重要視されています。東京都内にデータセンターを設置する必要性として、AI処理の迅速化や都内の行政サービスの最適化が挙げられました。また、地方と連携し、災害対策とコスト最適化を図ることも重要視されており、分散型データセンターの設置が検討されています。さらに、AIモデルのトレーニングと推論処理を分離し、適切なインフラ配置を行うことで、効率的な運用を目指しています。

エネルギー消費の効率化やカーボンニュートラルな運営についても議論され、再生可能エネルギーの活用や省エネ技術の導入が求められています。これにより、持続可能なインフラの構築が進められると期待されています。

AI活用のための人材・コミュニティ戦略

東京都は、海外のAI人材を積極的に誘致するための施策を検討しています。特に、研究開発拠点を設置するためのインセンティブを整備し、世界中の優秀なAIエンジニアや研究者が東京で活動しやすい環境を整えることが重要視されています。さらに、AIのコミュニティ形成を促進し、エンジニア同士が自由に議論できる場を提供することで、オープンな議論と技術革新を促進する取り組みが進められています。

また、AIのガバナンスにおいては、企業、市民、研究機関が協力して責任あるAI活用を進める仕組みを作ることが求められています。公的機関と企業が協働し、AIのリスク管理や倫理的な課題に対応する枠組みを構築することで、安全で信頼性の高いAI社会を実現することを目指しています。

「第2回東京都AI戦略会議」について一言

12月に実施された第1回が開催された東京都のAI戦略会議ですが、第2回が開催されました。第1回と比較して、より具体的な施策や戦略が議論されました。東京都のAI戦略に関する見方としては、東京都民の生活品質向上、東京都の公務員の生産性向上、首都圏のAI活用におけるグローバルモデルの構築、などがあります(もちろん、日本国内の大阪、福岡などの都市圏への適応も視野にあると思います)。

個人的には「都民との関係を強化する『AIで聞く力』」という部分に関心を持っています。これまでの行政サービス(個人としても法人としても)は行政サイドが紙ベース&アナログベースで、全体のプロセスが非効率となっていることが多かったので、DXやAIの切り口でデザインが置き換わることを期待したいと思います。

出所:東京都AI戦略会議 第2回

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

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