第1回 東京都AI戦略会議レポート

東京都AI戦略会議 第1回

東京都がAI技術を行政に取り入れるべく設置した「東京都AI戦略会議」の第1回会議が2024年12月1日に開催され、AI活用による行政改革の具体的な方向性が議論されました。本会議では、行政サービスの効率化、AI技術のガバナンス、そして東京都が全国をリードし、世界への展開も狙う「ジャパンモデル」の構築が注目を集めました。2025年2月に向けて論点が整理され、同年夏頃に東京都のAI戦略が取りまとめられる予定です。

目次

東京都AI戦略会議とは

東京都AI戦略会議は、AI技術を活用して行政の効率化を進め、都民サービスの向上を目指すために2024年に設立されました。この会議は、AI技術の進展に対応した東京都独自の戦略を策定することを目的としており、座長には東京大学の松尾豊教授を迎えています。参加する委員には、AI分野の専門家や法律の専門家など多様な分野の専門家が揃い、各テーマに基づいた深い議論が行われています。

東京都AI戦略会議では、「つくる力」「つかう力」「まもる力」「ささえる力」「つなげる力」の五つのテーマを軸に、AI技術の活用方法や倫理的課題、政策提言が進められています。東京都はこの会議を通じて、AIの可能性を最大限に引き出し、行政と市民の双方に利益をもたらすことを目指しています。

東京都は、2024年2月中旬にAI戦略策定に向けた論点整理を公表し、夏頃には最終的な戦略を発表する予定です。この取り組みを通じて、東京都は日本全体のAI導入を牽引し、行政サービスの質を向上させることを目指しています。

第1回会議の内容

第1回会議では、「ジャパンモデル」や「使う力」を中心に、東京都が全国の自治体に先駆けてAI活用を進めるための具体的な議論が展開されました。

ジャパンモデルの構築

東京都がAI技術を活用した成功事例を全国の自治体に共有することで、日本全体のAI導入を加速させる「ジャパンモデル」の重要性が議論されました。特に以下の点が強調されました。このモデルは、AI技術の普及だけでなく、日本全体での行政効率化や市民サービス向上にも寄与する可能性があると評価されています。

  • 東京が率先してAI技術の活用に取り組み、その知見を全国の自治体と共有する。
  • 国と地方の役割分担を明確にし、効率的な技術開発と政策立案を進める。
  • 海外のAI導入事例を参考にしながら、東京独自のモデルを構築する。

作る力

「作る力」では、AI産業の基盤強化と研究開発の促進が議論されました。東京都が世界のAI拠点として機能するための以下の取り組みが注目されました。東京都がAI技術の開発拠点としての地位を確立することを目指しています。

  • 人材誘致: 海外の優秀なAIエンジニアを東京に呼び込み、研究や技術開発を促進。
  • 国際連携: 海外のAIスタートアップやビッグテック企業との協力体制を強化し、東京の技術基盤を充実させる。
  • インフラ整備: データセンターや大学研究の基盤を強化し、AI技術の研究開発を支援。

使う力

「使う力」では、AI技術を行政サービスに取り入れることで、効率化と市民生活への恩恵をもたらす方策が議論されました。

  • 行政サービスの効率化: 補助金審査の自動化や下水道工事図面のAIによる審査など、具体的な業務改善の事例が共有されました。
  • 教育現場での活用: プログラミング学習支援や教員研修へのAI活用が挙げられ、AIリテラシー向上が期待されています。
  • 市民と行政の連携: AIを使った政策立案の支援や、都民からの意見収集プロセスの改善が提案されました。

聞く力

「聞く力」は、AIを活用して都民の声を行政に反映させる取り組みです。以下の点が議論されました。

  • 生成AIによる意見収集: 多様な市民の声を迅速かつ広範囲に集める技術を活用。
  • バイアスへの対策: データ処理過程の透明性を確保し、AIの信頼性を向上。
  • 双方向のコミュニケーション: 都民の意見を政策に反映するための仕組み作りが重要視されました。

責任あるAIの確立

AI活用に伴うリスクと倫理的課題を管理するための方策が議論されました。特に、データプライバシー保護や、AIが持つバイアスの抑制が重要なテーマとなりました。都民が安心してAIを利用できる環境を整えることが、東京都の重要な責務として位置づけられています。

「第1回東京都AI戦略会議」について一言

東京都でのAI戦略策定に向けた議論が始まりました。東京都を主体として議論でありつつ、ジャパンモデルの全国、海外への水平展開など、拡張性を持った取り組みとした始まっていることに要注意です。

総花的な論点でファシリテーションがとても難しそうな印象は受けつつ、2月までに論点が整理されること、実際の議論の中身としては、「使う力」=社会実装について多くの議論が出たとのことで、実行につながる良い議論になることを陰ながら期待しています。

出所:東京都AI戦略会議 第1回

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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