ソフトバンクグループ株式会社(SBG)は、精密医療のリーディングカンパニーであるTempus AI, Inc.(Tempus)と共に、AIと遺伝子解析技術を駆使して日本の医療を革新するジョイントベンチャー「SB TEMPUS株式会社」を設立しました。
SBGとTempusは、それぞれ150億円を出資し、がん治療を中心とした個別化医療の進展を目指します。この新たな合弁会社は、データ収集・解析やAIによる治療提案を通じて、日本の医療に大きな変革をもたらすことが期待されています。
Tempusとの提携
ソフトバンクグループ株式会社(SBG)は、AIと精密医療のリーディングカンパニーであるTempus AI, Inc.(Tempus)とジョイントベンチャー「SB TEMPUS株式会社」を設立しました。
この契約は2024年5月に締結され、2024年7月にクロージングが完了する予定です。SBGとTempusはそれぞれ150億円を出資し、遺伝子検査や医療データの収集・解析、AIによる治療提案を提供することで日本の医療のさらなる進歩を目指します。
がん治療の課題
現在の日本におけるがん治療は、多くの患者に当てはまるプロセスにもとづいて行われていますが、より高い治療効果を実現するためには、個々の患者に合った個別化医療の進展が求められています。
一方で、分子、臨床、病理、医療画像などのデータがデータ間、医療機関の間で分断されていることで、データの収集・解析が困難になっていました。また、日本における遺伝子検査の普及率は非常に低く、米国の30%に対して日本では0.7%と、約1/30の割合にとどまっており、がん治療における個別化医療の発展を妨げる要因となっていました。
Tempusのソリューション
Tempusは米国で蓄積した知見や技術を応用し、①遺伝子検査、②医療データの収集・解析、③AIによる治療提案を日本で提供します。
Tempusが開発したアダプターというデータ処理機構を用いることで、日本の医療機関のデータ構造はそのままに、データ解析に必要なデータ形式へ整形します。加えて、がん患者770万件、病院数2,000、画像データ100万件、病理データ97万件、DNA/RNAデータ22万件という世界最大級の医療データセットを活用することで、より効果的な治療法の発見、開発、提供へ繋げます。
これにより、がん医療の中核を担う拠点病院や国内の医療施設、製薬会社などと連携し、個別化医療を推進します。日本でのサービス展開は年内に順次開始する予定です。
Tempusとは
Tempusは2015年に設立され、ヘルスケア領域においてAIを実践的に応用した個別化医療を推進するテクノロジー企業です。Tempusの株式は2024年6月14日にNASDAQ Global Select Marketで取引が開始されました。
データ収集に関わる医療機関、患者からの課金はなく、収集、分析されたデータを、新たな医薬品を開発する製薬会社に販売することでマネタイズするモデルとなっています。
「ソフトバンクグループとTempus提携」について一言
Perplexityとの提携に続き、TempusとのJV設立。ソフトバンクもOpenAIに負けず劣らず、大きめの施策を打ち出していますね。しかも珍しく孫氏自らのメディア出演も多いのでかなり力を入れているようです。
今回のニュースはプレスだけでなく会見も実施しており、その中では日本を代表する13のがん治療の医療機関のトップを招待したトークセッションも実施されました。こうなると日本全体の医師も無視することはできないので、さすがだなと思います。
またここ10年で創業された電子カルテやオンライン診療などの医療ベンチャーは多く存在しますが、巨人であるソフトバンクが医療DXに参入することで、その立場を危うくする企業も少なくないかもしれません。
出典:ソフトバンクグループ、Tempusとともに医療データとAIの活用により日本の医療のさらなる進歩に貢献するジョイントベンチャー「SB TEMPUS」を設立(SoftBank プレスリリース)