OpenAIの転換点:非営利から営利へ、幹部流出、値上げ観測とどう向き合うか

OpenAIニュース

AIの最前線を走るOpenAIは、営利企業への再編を検討しており、企業価値の上昇が期待される一方で、幹部の離職や経営体制の変化が話題となっています。また、OpenAI関連サービスの値上げ観測もあり、企業による生成AI関連サービスの活用に関して考慮を促す様相となっています。

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ChatGPT、Copilot、ExabaseといったAI関連ツールが多くサービス提供される中で、企業におけるAI導入アプローチを俯瞰的に整理しています。どのようなタイプのツールがあり、結局何を使ったら良いのか、シンプルかつ感覚的に、かつ短時間で理解されたい方におすすめです。

目次

非営利から営利への転換

OpenAIは現在、非営利団体と営利部門が共存するハイブリッド構造を取っており、AI技術の発展を社会全体に還元することを使命としています。しかし、同社は営利企業への再編を計画しており、投資家への利益上限撤廃や、サム・アルトマンCEOが初めて株式を取得する予定であることが示唆されています。アルトマンの株式取得は、OpenAIが今後、より大きな利益を追求する企業体制に移行することを意味しています。この再編により、企業価値は1,500億ドルに達する可能性があると言われています。再編の具体的なスケジュールはまだ不透明ですが、弁護士や株主との協議が続いており、今後の進展が注目されています。

出所:Exclusive: OpenAI to remove non-profit control and give Sam Altman equity

幹部の流出が示す組織内の問題

営利化に向けた変化の中で、OpenAIでは幹部の退職が相次いでいます。特に、技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ氏が2024年9月に突如辞任を発表したことが大きな話題となりました。ムラティ氏は、6年以上にわたってOpenAIに貢献し、ChatGPTの開発を主導してきた人物です。ムラティ氏の辞任だけでなく、2024年5月には共同創業者で主任科学者のイリヤ・サツケバー氏、スーパーアライメント・グループの共同リーダーであるヤン・ライケ氏も退社しています。また、同じく共同創業者のグレッグ・ブロックマン氏も2024年8月に長期休暇を発表し、経営陣の変動が続いています。

出所:OpenAI、ついにCTOが辞任 営利企業への再編進むなか、幹部の離脱続く

OpenAIの値上げ観測

OpenAIの業績は非常に好調であり、特に有料サービス「ChatGPT Plus」の利用者数は約1,000万人に達しています。2024年の総売上は約37億ドル(5,200億円以上)に達する見込みで、その内訳としてChatGPT Plusの売上が約27億ドル(3,800億円以上)、企業向けサービスからの売上が約10億ドル(1,400億円以上)とされています。特に、2024年8月のChatGPT Plusの売上は約3億ドルに達しており、前年比で約18倍の急成長を遂げています。しかし、急成長の一方で、事業コストの増加も深刻です。人件費の増加やオフィス賃貸料の上昇、さらにはAIのトレーニングに必要な膨大なクラウドコンピューティングの利用料金がかさんでおり、2024年には約50億ドル(7,000億円以上)の赤字が見込まれています。この状況は、利用者数が増えるほど赤字も増大するという課題を生んでいます。このため、OpenAIはChatGPT Plusの料金引き上げを検討しています。現在の月額20ドルから、早ければ年内に2ドル値上げし、最終的には月額44ドルまで引き上げる計画です。

出所:ChatGPTに「値上げ観測」!最高技術責任者に加え、副社長までも退社…「人材流出が止まらない」「巨額赤字」OpenAIの正念場

「OpenAI関連ニュース」について一言

AIは利益をもたらすのか?AIを利用する企業の業績は向上するのか?結論が明示されない問いに対するヒントに当たるイベントが発生しています。AIを活用する企業にとっては2つの点で注意が必要です。

1つ目は、多くの企業がOpenAIやGoogleのようなテックジャイアントが開発する言語モデルを活用していますが、このような経営上のリスクに対してどのような代替手段を持っておくか。また言語モデルの利用コスト増加に対してどのように対策するか。2つ目は、OpenAIのような情報の出し先が営利化した際に、どのように自社データを守り、自社としてのセキュリティ、コンプライアンスを担保するのか、という点です。

これらの問いに答えるためには、生成AIに対してツールだけではなく、エコシステムとしてどのように機能しているか、という全体的な理解が必要になります。

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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