「Gartnerハイプサイクル2024年版」に新たな5つのテクノロジーが登場:未来を切り拓く技術とは

Gartner

Gartnerは、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプサイクル:2024年版」を発表しました。今回は、5つの新しいテクノロジーが追加され、未来を見据えた企業戦略において重要な指針となる内容が含まれています。

目次

Gartnerハイプサイクルの概要

Gartnerのハイプサイクルは、新しい技術やイノベーションが市場に浸透する過程を視覚的に示したモデルです。このモデルは、技術の採用がどの段階にあるかを示すもので、通常は「技術の黎明期」「過度な期待のピーク期」「幻滅期」「啓発期」「生産性の安定期」の5つのフェーズから構成されます。

企業はこのハイプサイクルを利用して、どの技術が投資に値するか、あるいはどの技術が実用化に向けて成熟しているかを判断することができます。特に「過度な期待のピーク期」にある技術は、多くの期待が寄せられていますが、現実の成熟度とのギャップに注意が必要です。一方で、これから普及が見込まれる技術には早期投資が求められることもあります。

2024年版のハイプサイクルでは、検索拡張生成 (RAG) をはじめとする5つの新しいテクノロジーが追加され、それぞれの技術がどのフェーズに位置しているかが示されています。

ハイプサイクル
日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプサイクル:2024年版

5つの新規追加項目とは

2024年版では、以下の5つのテクノロジーが新たにハイプサイクルに追加されました。

検索拡張生成 (RAG: Retrieval Augmented Generation)

検索拡張生成 (RAG) は、大規模言語モデル(LLM)と検索技術を組み合わせたハイブリッドアプローチです。RAGを用いることで、企業が持つ膨大なデータを生成AIの出力に組み込むことで、より業務に特化した情報を生成できる点にあります。しかしながら、RAGでは精度向上が課題として残っていることから、現在「過度な期待のピーク期」に位置しています。企業がRAGを導入する際には、適切な期待値を設定することが重要になります。

ヒューマノイド

ヒューマノイドは、人間の形を模したロボットで、製造業やサービス業での物理的な作業を自動化することを目的としています。特に、2024年以降、主要な自動車メーカーがヒューマノイドを工場に導入する計画を進めており、製造プロセスが劇的に効率化されることが期待されています。ヒューマノイドの導入は、人間の労働負荷を軽減し、危険な作業環境での人間の介入を減らすことができるため、産業革命的なインパクトが見込まれています。

マシン・カスタマー

マシン・カスタマーは、AI技術を活用して顧客の代わりに意思決定を行うシステムを指します。これは、消費者の購買行動やカスタマーサポートを自動化することになり、企業にとって顧客対応の効率化を図ることになります。たとえば、AIが消費者の代わりに最適な製品を選んで購入したり、サポートへの問い合わせが可能になります。マシン・カスタマーは、消費者行動だけでなく、企業サイドのビジネスモデル革新の可能性を孕んでいます。

エンボディードAI (Embodied AI)

エンボディードAIは、物理的なロボットや機械にAIを組み込んで、自律的にタスクを遂行する技術です。ヒューマノイドと異なり、エンボディードAIは必ずしも人間の形状を取る必要はなく、特定のタスクや環境に最適化された形状や機能を持つ場合が多いです。たとえば、自律走行車やドローン、産業用ロボットなどがエンボディードAIの一例です。特定の作業を自律的に実行するために設計されており、その応用範囲は物流、医療、製造など多岐にわたります。

LBM (Large Behavior Model: 大規模振る舞いモデル)

LBMは、大規模なデータセットを用いて人間の行動や意思決定をシミュレーションするモデルです。マーケティングや消費者行動の予測に特化しており、企業はこれを活用して顧客の行動を予測し、より効果的なマーケティング戦略を策定することができます。LBMの革新性は、複雑な行動パターンを高い精度で予測できる点にあり、よりきめ細やかな消費者動向を把握することが可能です。似た用語にLLM(大規模言語モデル)がありますが、LLMがテキストデータを処理するのに対し、LBMは行動データに基づくシミュレーションを重視しています。これにより、消費者の意思決定プロセスや社会的なトレンドをより深く理解する点に違いがあります。

「Gartnerハイプサイクル」について一言

生成AIツールのことばかり考えているとつい目線が具体に落ちてしまいますが、AIを起点とした技術革新の全体像をみると動き方が変わりますね。特に中小・スタートアップのような企業は始めやすく期待の大きい領域、大企業では時間がかかるが確かに来る領域が狙い所になるのでしょうか。

RAGについては私自身も取り扱うことはありますが精度の制約もあり魔法の杖というわけではないと感じます。マシン・カスタマーやLBMなどはマーケティング関連ですが初めて聞きました。本文にもありましたが、技術ごとに理想と現実のギャップに違いがあるので、期待値を調整した取り入れが大事になる、という指摘はその通りだと思いました。

出所:Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年」を発表

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

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