Anthropicは2025年4月、生成AI「Claude」における大規模アップデートを発表しました。今回追加されたのは、複数のウェブ検索を自律的に繰り返して高品質な情報を収集できる「Research」、Gmail・Googleカレンダー・Googleドキュメントと接続して業務文脈を即時に理解する「Google Workspace連携」、そして社内文書を自動インデックス化し検索精度を高める「Cataloging」という3つの注目機能です。これらの機能により、Claudeは単なるチャット型AIから、より実務的で信頼性の高い業務支援パートナーへと進化を遂げようとしています。
Research
ClaudeのResearchは、従来の単一検索とは異なり、質問に対して複数の検索を自律的に繰り返しながら情報を収集・整理するエージェント型の調査機能です。異なる角度からの探索や検証を自動で行い、信頼性の高い回答と引用をセットで返してくれます。
この機能により、マーケティング担当者であれば、競合の情報を収集すると同時に、社内に蓄積された製品資料をもとにローンチ計画を効率的に立てることができます。また、エンジニアの場合は、社内の設計書と外部APIドキュメントを並行して読み解くことで、より精緻なシステム設計に取り組めるようになります。学生にとっては、過去の授業ノートを活用しつつ、Claudeを通じて最新の研究資料を取り込み、自分専用の学習プランを構築することが可能になります。
Researchは現在、米国・日本・ブラジルのMax、Team、Enterpriseユーザー向けにβ提供されています。
Google Workspace
Claudeは今回のアップデートで、Gmail、Googleカレンダー、Googleドキュメントと直接接続できるようになりました。これにより、メール内容、予定、ドキュメントの文脈をAIが自動で読み取り、ユーザーは明示的に情報を渡さなくても、タスクや問い合わせに対して即座に文脈を踏まえたアウトプットが得られます。たとえば「先週の会議ノートをまとめて」と指示すれば、Claudeは該当イベントに関連する議事メモとその前後のメールスレッドを自動で収集・整理します。また「顧客Xに関する情報を整理して」と伝えるだけで、過去のやり取り、関連資料、カレンダー予定までを横断的に検索し、要点をまとめてくれます。この連携はすべての有料プランユーザーにβ提供されており、TeamやEnterpriseでは管理者がドメイン単位での有効化が必要です。

Cataloging
Catalogingは、Claude Enterprise向けに提供される高度な情報検索機能です。Googleドキュメントを自動でスキャン・構造化し、チャンク(意味単位の情報ブロック)ごとにインデックス化。検索拡張生成(RAG)の精度を大きく高める役割を担います。この仕組みにより、ユーザーはファイル名や保存場所を覚えていなくても、内容に基づいてAIが必要な情報を的確に取り出してくれます。これからのAI活用戦略の要となっていくでしょう。
「Claudeの大幅アップデート」について一言
Claudeの今回のアップデートは、単純に「excellent」です。Claudeはこれまでも推論力や表現力という面でOpenAIやGoogleと肩を並べる存在でしたが、唯一欠けていたのが外部検索機能でした。そこにResearchが追加されたことで、まさに鬼に金棒です。
さらに、Google Workspaceとの連携も素晴らしい進化です。多くの他社ツールではファイルごとに都度指定する必要がありますが、Claudeはフォルダ全体を自律的に探索するため、導入と活用のハードルが非常に低い点が魅力です。現時点はプロンプトが固定されている点と参照できるのがGoogleドキュメントだけだったので、この辺りの制約が緩和されるとより便利になると思います。
そしてCataloging。これにより企業全体のドキュメントを自動でRAGに組み込むことが可能になります。もちろん、RAGにおいては「文書ごとのチャンク分割」が精度の鍵であり、80点以降の品質を目指すには個別対応が不可欠です。しかし、広く浅くRAGを浸透させるという観点からは、このCataloging機能は非常に効果的であり、今後のAI活用の基盤となる技術といえるでしょう。
出所:Claude takes research to new places
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