カリフォルニア州におけるAI規制:AIモデルの安全性テスト、電子透かし義務化が焦点

カリフォルニア州のAI規制

カリフォルニア州では、個人情報保護法(CCPA)に続き、新たなAI規制法案(SB1047およびAB3211)が議論されています。AIモデルの安全性テストやAI生成コンテンツにおける電子透かしの義務化が焦点となっており、イーロン・マスクやOpenAIなどの主要な関係者・企業から支持を受けています。

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目次

カリフォルニア州の法対応経緯

カリフォルニア州は(加州)、2018年に米国初の包括的なプライバシー法である「カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)」を制定しました。この法律は、州内の消費者に対して、自分の個人情報がどのように収集され、利用されているかを知る権利を付与し、削除や販売拒否の権利も提供しています。AI技術を使用して個人情報を処理する企業に対しても、CCPAはその遵守を求めており、透明性とデータ保護の強化が図られています。

2023年9月6日、ギャビン・ニューサム州知事は、AI技術の倫理的で責任ある導入を促進するための州知事令「N-12-23」に署名しました。この命令は、州政府内でのAI技術の使用に関するリスク評価、従業員の教育訓練、そして学術機関との協力を通じて、カリフォルニア州がAI技術のリーダーシップを維持するための指針を提供しています。州知事令は法令と異なり、州政府の行政府内に閉じた命令ではありますが、州全体でAI技術の利用が倫理的かつ効果的に行われることが期待されています。

直近検討されているAI規制法案

いくつかの法案が検討されていますが、主要な規制法案としてはSB1047(AIモデルの安全性テスト)、AB3211法案(AI生成コンテンツへのウォーターマーク)があります。

SB1047法案は、ハイテク企業やAI開発者に対して、独自のAIモデルに関する安全性テストの実施を義務付けるものです。イーロン・マスク氏は、この法案を支持し、「消費者に潜在的なリスクをもたらす製品や技術を規制するのと同じだ」とコメントしています。

AB3211法案は、AIが生成したコンテンツに対して「ウォーターマーク(電子透かし)」を義務付ける内容です。特に選挙期間中の誤情報拡散を防ぐために、AI生成コンテンツと人間が生成したコンテンツを区別することが求められています。この法案はすでに州下院を通過しており、上院での最終承認を待っています。OpenAIのジェイソン・クォン最高戦略責任者(CSO)は、この法案を支持し、オンライン上のコンテンツの透明性向上に役立つと述べています。

「加州のAI規制法案」について一言

加州はAIに限らず、電気自動車や自動運転などに関する先端テクノロジーにおいて早い時期に法的立場を示すことが多い州です。日本の法的規制も、加州の決定が前例となる可能性があるので要注目です。

ウォーターマークについては利用者サイドで実施しようとすればそれほど難しくはないでしょう。一方、AIモデルの安全性テストについてはやや難しさが予想されます。というのも現在AIモデルを開発する企業はOpenAIやMetaのようなガバナンスの効いた巨大企業ですが、オープンソースという形でモデル開発の裾野が広がることが想定されます。モデル開発を試みるすべての関係者が安全性を担保することが重要ですし、この領域でのビジネスの発展も期待されます。

出所:マスク氏、加州のAI規制法案支持 安全性テスト義務付け / オープンAI、加州の法案支持 AI生成コンテンツに「透かし」義務付け

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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