AGI(汎用人工知能)は、次世代の技術革命として、社会や経済に計り知れない影響を与える可能性を秘めています。エージェントに関する技術・投資について数多くの取り組みを手掛けるOpenAIのサム・アルトマン氏が自身のブログの中で、3つの経済的な指標をもとに、今後のエージェント普及の可能性について言及しています。また、日常の業務に留まらず、経済構造や労働形態といった社会システムに対する影響を考慮する必要性を説いています。
サム・アルトマンのブログ要約
1. AGIの使命とその背景
私たちの究極の目標は、AGI(汎用人工知能)を通じて全人類に利益をもたらすことです。ここでのAGIは、人間レベルの複数分野における問題解決能力を有するシステムと定義されています。これまで電気、トランジスタ、コンピュータ、インターネットなどの技術革新が積み重なってきたように、AGIは次の大きな飛躍として、今後の社会や経済の根底を変える可能性を秘めています。AGIが実現すれば、従来の道具の延長線上にありながらも、これまでにないスケールで人類の能力を引き上げることになるでしょう。
2. 人類の進歩と技術革新の連鎖
歴史的に見れば、人類は常に前世代の知識や発見を礎に新しい技術を生み出してきました。各時代の技術革新は、次世代の可能性を広げ、生活の質や経済的繁栄に大きく貢献してきました。AGIもまた、この進歩の連鎖の中で登場する新たなツールです。将来的には、全世界の人々が現在の最も影響力のある専門家以上の能力を発揮できる時代が到来するかもしれません。これは、知識や技術が指数関数的に広がり、個人の創造性や効率性が大幅に向上する未来を意味します。
3. AIの経済的側面に関する3つの主要な観察
リソースと知能向上の関係:AIモデルの知能は、トレーニングや運用に投入される計算資源、データ、そして推論計算といったリソースの対数に比例して向上します。つまり、投資を増やせば増やすほど、連続的かつ予測可能な性能改善が実現できるという点は、技術進歩の加速を示しています。これは、将来的な技術開発のロードマップを描く上で非常に有力な根拠となります。
利用コストの急激な低下:一定レベルのAIを利用するためのコストは、約12ヶ月ごとに約10倍低下するという観察結果があります。実際、GPT-4からGPT-4oにかけてのトークン単価の急落は、その事実を裏付けるものです。ムーアの法則(18ヶ月で性能が倍増)をはるかに凌駕するこの進展は、AI技術が今後さらに広範囲に普及する土台となるでしょう。
知能向上の超指数的な社会経済的価値:単にAIの知能が向上するだけでなく、その社会経済的な影響は超指数的に広がります。すなわち、少しの性能向上でも、経済成長や社会の変革に与えるインパクトは極めて大きくなるため、今後も投資が指数関数的に増加し続けることが予想されます。これが、新たなイノベーションを加速させる好循環を生み出す要因となるのです。
4. AIエージェントの普及と知識労働の変革
近い将来、バーチャルな同僚として機能するAIエージェントが登場する見込みです。例えば、ソフトウェアエンジニアリングの分野では、数日間にわたるタスクをこなせるジュニアレベルのエージェントが実現されると予想されます。これらのエージェントは完全な創造性や最先端のアイデアを生み出すことは難しいかもしれませんが、人間の作業を大幅に支援し、効率性を向上させる役割を果たします。さらに、このようなエージェントが1,000体、100万体と増え、あらゆる知識労働の分野に浸透すれば、仕事の仕方自体が根本的に変わり、個人の創造性や適応力がより一層求められる社会になるでしょう。
5. 社会・経済への大規模な影響とその課題
技術革新は、短期的には現状の生活を大きく変えるものではありません。2024年や2025年の日常生活は今と大きく変わらず、恋愛や家族、趣味といった人間の営みは続くでしょう。しかし、長期的には、経済構造や労働の形態、さらには富や権力の分配にまで大きな影響を及ぼすことが避けられません。特に、資本と労働のバランス、技術へのアクセスの公平性、そして安全性と倫理の問題など、多くの課題が顕在化することが予想されます。これらの課題に対処するためには、公共政策の整備や新たな社会契約が求められます。
6. 公共政策と個人の権限強化の重要性
AGIの恩恵を広く行き渡らせるためには、技術のオープン性や透明性、そして公共政策の役割が極めて重要です。個々の人々が技術をコントロールし、安全かつ効果的に利用できる環境を整備することは、技術進歩の恩恵をより公平に分配するための鍵となります。また、AI技術を悪用して権威主義的な支配が強まるリスクにも対処する必要があります。適切なガバナンスや監視体制を確立することで、個人の自由と創造性を守りながら、技術革新を推進することが求められます。
7. 将来のビジョンとそのインパクト
2035年の未来では、全ての人が今日の技術を超える知的能力を発揮できる社会が実現するかもしれません。資源不足や経済的不平等といった現状の問題を解消するために、AIが普及し、誰もが無制限の知的リソースにアクセスできる環境が整備される可能性があります。現在、十分な資源に恵まれていない才能が、AI技術によってその能力を存分に発揮できるようになると、世界全体の創造的な成果が大きく向上し、人類全体に計り知れない恩恵がもたらされるでしょう。
「サム・アルトマンのブログ」について一言
3つの観察から、AIモデルはより賢く、よし安く、より恩恵をもたらす、といったことを示唆しており、今後の不可逆的なAIの普及を示唆しています。またエージェントの形として、より多くのユニットが存在して人間を助けてくれる、という存在が現在のサム・アルトマンのイメージであることも示されています。
ポジティブな想像はいくらでもできますが、長期的に経済構造や労働の形態、富や権力の分配にまで大きな影響を及ぼすことが予想されますし、資本と労働のバランス、技術へのアクセスの公平性、安全性と倫理の問題など、多くの課題が顕在化する可能性もあります。小規模組織でもできることが増えていき、競争力のない大組織は弱体化していきます。そうした可能性を受け止めて、個人として備えるべきである、というメッセージのように受け取っています。