AI強国アメリカを象徴?OpenAIが政府機関向けのカスタマイズ AI「ChatGPT Gov」を発表

chatgpt gov

OpenAI は、米国政府機関向けに特化した AI ソリューション 「ChatGPT Gov」 を発表しました。米国政府ではすでにChatGPT Enterpriseなどを通じてOpenAIのサービスを利用していました。ChatGPT Govは。政府機関が最先端の AI 技術を活用し、セキュリティやプライバシー要件を満たしながら業務効率を向上させるために、特別に開発されました。

2024年AIニュース完全ガイド
目次

ChatGPT Gov とは

ChatGPT Gov は、米国政府向けにカスタマイズされた ChatGPT の特別版であり、政府機関が OpenAI の最新 AI モデルに安全かつ効率的にアクセスできるようにするものです。Microsoft Azure の商用クラウドまたは Azure Government クラウド上で運用でき、厳格なセキュリティ基準 (IL5、CJIS、ITAR、FedRAMP High) を満たすことが可能です。

このサービスでは、政府ワークスペース内でのデータ管理機能を提供し、会話の保存や共有、テキストや画像ファイルのアップロードが可能です。また、GPT-4o を活用することで、テキストの解釈や要約、コーディング、画像解析、数学の問題解決などの高度なタスクを実行できます。さらに、政府機関内でのカスタム GPT の作成や共有が可能で、特定の業務ニーズに対応した AI のカスタマイズが容易になります。

IT 管理者向けには、ユーザーやグループの管理、シングルサインオン (SSO) などを含む管理コンソールが提供され、組織全体での安全な運用を支援します。

OpenAI は、ChatGPT Enterprise の FedRAMP 認証取得や、Azure の機密データ対応クラウドへの拡張など、政府向け AI のさらなる強化を進めています。また、AI の活用が進む中で、透明性や説明責任の確保、倫理的な利用についても引き続き注力し、政府機関との連携を深める方針です。

ChatGPT の政府機関での使用状況

ChatGPT はすでに多くの政府機関で活用されており、さまざまな分野での業務効率化が進んでいます。空軍研究所では、ChatGPT Enterprise を活用し、社内リソースへのアクセスの最適化や AI 教育のサポートを行っています。ロスアラモス国立研究所では、科学研究のために AI を活用し、特に生物科学分野での AI 応用についての評価研究を進めています。ミネソタ州では、州内の多言語対応を強化するために翻訳サービスに AI を導入し、精度向上とコスト削減を実現しました。ペンシルベニア州の AI パイロットプログラムでは、ChatGPT Enterprise を導入した結果、日常業務の作業時間が 1 日あたり約 105 分短縮され、大幅な効率化を実現しました。

ChatGPT Gov と Enterprise の違い

多くの政府機関ではすでにChatGPT Enterpriseプランを使っていますが、Govプランとの違いを補足します。

ChatGPT Gov は米国政府機関向けに特化しており、Microsoft Azure または Azure Government Cloud 上でのセルフホスティングが可能です。一方で、ChatGPT Enterprise は一般企業向けに提供され、OpenAI が管理するクラウド環境上で運用されます。

セキュリティ基準においても違いがあり、ChatGPT Gov は IL5、CJIS、ITAR、FedRAMP High などの政府機関向けの厳格なセキュリティ要件に準拠していますが、ChatGPT Enterprise は SOC2 に準拠したセキュリティを提供しています。

機能面では、ChatGPT Gov には政府機関向けの管理コンソールが搭載され、会話の保存や共有、カスタム GPT の作成・共有が可能です。一方で、ChatGPT Enterprise も同様に高度な機能を提供しますが、一般企業向けの使いやすい管理機能や無制限の GPT-4 アクセス、高速パフォーマンスが強みとなっています。

データの取り扱いに関しては、ChatGPT Gov は非公開の機密情報を扱うことが可能で、特に政府機関の機密データを安全に処理できるように設計されています。一方、ChatGPT Enterprise では、ビジネスデータの所有権はユーザー側にあり、OpenAI はそれらのデータを AI のトレーニングには使用しません。

価格設定については、どちらも個別見積もりとなっていますが、ChatGPT Enterprise には Plus プラン($20/月)も用意されています。

「ChatGPT Gov」について一言

単純に業務におけるAI活用という観点では、政府全体でChatGPTを安全に使えるようになるということで一層の効率化が望めるという意味でポジティブだと思います。2025年に設立された政府効率化省の支出削減目標は2兆ドルとも言われているので、そうした方針にも沿った取り組みとも見ることができます。日本のように自治体単位ではなく、国単位で一気にAIツールの導入を図ることで、政府のAI機能を一気に底上げする可能性もあります。

またビジネス的に見ると、OpenAIがまた力強い一方を踏み出したようにも見えます。政府効率化省のトップはxAIのイーロン・マスクですが、今回導入を決めたのはOpenAIのサービスであり、AI分野ではOpenAIの存在感が大きく、OpenAIを中心に物事が決まっていっている感もあります。また異なる観点ですが、ドナルド・トランプがイーロン・マスクを政府サイドに置きながらも、AI分野ではOpenAIとの関係も持つということは、(イーロン・マスクを贔屓しすぎない)権力の分散を図っているように見えもします。

出所:Introducing ChatGPT Gov

2024年AIニュース完全ガイド
ProFabサービス資料
シェアをお願いします!

執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

目次