機械学習を使った画像認識と実用事例

機械学習を使った画像認識と実用事例

機械学習による画像認識とは、画像に含まれる情報を特定し、分類する技術です。画像認識はAIが膨大な画像データを学習し、物体の特徴を解析することで成り立っており、たとえば、顔認識や物体検出、セグメンテーションなど、画像認識はさまざまな用途で利用されています。

近年では、ディープラーニングの進化によって精度が大幅に向上し、産業や日常生活においても活用が広がっています。スマートフォンの顔認証や自動車の障害物検知といった身近な例から、製造業や農業、さらには医療分野に至るまで、画像認識の応用範囲は非常に広く、現代社会において欠かせない技術となっています。

企業版生成AI導入アプローチ
目次

機械学習を使った画像分類

画像認識は、画像に何が映っているのかを特定する技術です。コンピュータが画像から形や色といった特徴を読み取り、内容を分析して内容を判断します。例えば、人の顔を認識する場合、目、眉毛、鼻、口の位置や数を基に顔と判定します。スマートフォンやデジタルカメラの顔認識機能も画像認識の一例です。近年は、ディープラーニングと呼ばれる機械学習の手法により、画像認識の精度が飛躍的に向上しました。現在では、人間以上の認識能力を持つAIシステムも存在します。

画像処理は、画像に何が写っているのかを判断し、分析する技術を指します。物体認識や顔認識、文字認識など、さまざまな分野で活用されていますが、画像処理を実現するには大量のデータをAIに学習させ、その中からパターンやルールを見つけ出す必要があります。

機械学習は、大量のデータを分析してルールを発見し、その知識を応用する技術です。その中でも、ディープラーニングは非常に効果的で、画像分類の精度を大幅に高めることができます。画像分類では、AIが画像から特徴を抽出し、それを基に動物や食べ物、人間などに分類します。

AIが人間に近い、またはそれ以上の能力を得るためには、経験の代わりに大量のデータを分析させ、法則を見つけ出せるようにすることが重要です。例えば、大量の画像をAIに学習させた後、別のデータで分類の精度をテストすることで、性能を評価します。

画像分類を行うための機械学習の処理の流れ

AIを使って画像を分類する流れについて、たとえば、画像を猫、犬、牛のいずれかに分類するという課題があるとします。人間は画像を見てそれぞれの特徴から判断しますが、機械学習ではこの判断を再現するために次のような手順を取ります。

  1. 画像から猫、犬、牛を区別する特徴量を抽出する。
  2. 特徴をもとに予測器(モデル)を作成する。
  3. 未知の画像を猫、犬、牛のいずれかに分類する。

特徴量とは、画像の内容を数値化した情報です。たとえば次のようなものがあります。

  • 目の形:長径と短径の比率を計算
  • 尻尾の長さ:単位をメートルに換算
  • 体の色:RGB値で表現
  • 口の形:あらかじめ用意した形状パターンの番号で数値化

上記の情報をまとめると、多次元の数値の並びができます。4個の特徴量があれば4次元ベクトルができます。実際には数学的手法や画像処理技術を駆使して、より複雑な特徴量を抽出し、128次元や4096次元といった高次元ベクトルで表現されます。

画像から特徴量を取り出し、ラベル(正解)と関連付けます。抽出には高度なアルゴリズムが使われ、数学をベースにしています。抽出された特徴量は、多次元空間内の点として表現されます。

次に、識別器を使って多次元空間内に分類のための境界を作ります。この境界を決めるために学習を行い、識別器のパラメータを調整し、モデルが完成します。

画像分類が活用される背景

AIと機械学習を活用した画像分類はさまざまな分野で注目を集めています。画像認識技術は物体を高精度に特定する能力を持ち、ディープラーニングの進化によってその精度は大きく向上しています。画像分類により人の目や経験に頼っていた作業を自動化し、効率的かつ均一に処理できるようになり、業務の効率化や生産性向上が期待されています。

たとえば、Googleレンズは画像をアップロードするだけで、その内容を分析し説明します。また、空港では人物の画像認識技術が導入されており、セキュリティや管理の効率化に役立っています。膨大な商品を扱う店舗では、画像認識によって商品名や価格を即座に判別し、迅速な対応を可能にしている、というような例があります。

画像認識に使われる技術

物体識別(物体認識)

物体識別は画像内に対象の物体が存在するかを確認する技術です。画像に映っている物体のカテゴリを特定したり、物体の情報を抽出したりします。物体識別には物体検出が関連しており、物体識別(物体を識別する技術)と物体検出(物体の位置や種類、個数を特定する技術)は役割が異なるものの、組み合わせて使用されることが多いです。

物体検出

物体検出は画像内の物体の位置を特定する技術です。物体認識とは目的が異なりますが、物体の特徴を抽出する際には位置情報も重要なため、両者が併用されるケースが一般的です。人間の場合、物体の位置と内容を直感的に判断できますが、コンピューターでは認識と検出を分けて処理します。

セグメンテーション

セグメンテーションは画像内の各ピクセル(ディスプレイを構成する最小単位の点のこと)がどの物体クラスに属するかを分類する技術です。画像全体をクラス別にラベル付けし、特定の領域を切り出したり分類したりします。ただし、同一クラス内で重なりがある場合は、領域全体を一つのクラスとして認識するため、物体ごとの識別やカウントは行えません。

姿勢推定

姿勢推定は静止画や動画から人体の関節点を検出し、人間の姿勢を把握する技術です。姿勢推定は人体検出とも呼ばれ、自動運転、スポーツ、セキュリティなど多くの分野で活用されています。以前は、人間同士の重なりや身体の一部が隠れる状況での検出が難しいという課題がありましたが、奥行き情報を活用することで、問題が改善されつつあります。

機械学習を活用した画像認識モデル

ロジスティック回帰

ロジスティック回帰は教師あり学習の分類タスクで使われる線形モデルの一つです。分類が曖昧な場合でも、高い確率で判別する能力を持っています。クラスに所属する確率を計算して分類を行うため、シンプルで使いやすく、最初のステップとして用いられることが多いです。

ロジスティック回帰は目的変数がカテゴリデータであり、説明変数が数量データの場合に適しています。例えば、ある特徴量に基づいて「ある現象が起こる確率」を予測する際に有効です。線形分離が難しい問題にも対応できるよう工夫されており、古典的でありながら現在も広く利用されています。

ランダムフォレスト

ランダムフォレストは複数の決定木を組み合わせて結果を出すアンサンブル学習(複数の機械学習モデルを組み合わせて、より高い予測精度を実現する)の手法です。それぞれの決定木が予測を行い、多数決や平均値を取ることで分類や回帰を実現します。

単体の決定木は過学習しやすいという弱点がありますが、ランダムフォレストは異なるデータを用いて複数の決定木を作成することで問題に対応します。過学習した結果を平均化することで、モデルの汎化性能を向上させています。ランダムフォレストはクラス分類や回帰だけでなく、クラスタリングにも利用されています。

ブースティング

ブースティングは弱いモデル(弱学習器)を組み合わせて精度を高めるアンサンブル学習の一種です。弱学習器を逐次的に構築し、それぞれの結果を強化していきます。

バギング(ノイズの多いデータ・セット内のデータの散らばり具合を抑えるために利用されるアンサンブル学習の1つ)とは異なり、ブースティングでは前の学習器で誤分類されたデータを重視して次の学習器を構築することで、モデル全体の精度を向上させることが可能です。ただし、並列処理ができないため計算に時間がかかる場合があります。

SVM(サポートベクターマシン)

SVMは教師あり学習における分類と回帰のタスクで用いられる強力なアルゴリズムです。特に分類タスクに優れており、マージン最大化やカーネル法といった手法を利用することで非線形データも効果的に処理できます。

高次元データに対しても精度が高く、最適化するパラメータが少ないため、効率的に利用できます。ただし、学習データが増えると計算量が膨大になりやすい点やスケーリングが必要になる点は注意が必要です。SVMは主に2クラス分類に特化しており、高い精度が求められるタスクで多く使われています。

ディープラーニングによる画像認識の実用例

画像認識で画像検索の精度が向上

中国のアリババグループは、オンライン通販サイト「淘宝(タオバオ)」や「天猫(Tmall)」に画像認識技術を導入しています。ユーザーが欲しい商品の写真をアップロードすると、サイト内の類似商品を検索できます。この技術は、アリババ独自の画像検索エンジン「Image Search」によって支えられています。 

参考:https://www.alibabacloud.com/ja/product/imagesearch

農業の収穫や仕分けを自動化する画像認識技術

静岡県湖西市の農家では、ディープラーニングを活用したキュウリの自動仕分け機を自作しました。この機械は、ベテラン農家が仕分けたキュウリの画像を教師データとして学習し、キュウリの等級を自動で判別します。 

参考:https://staff.persol-xtech.co.jp/i-engineer/product/cucumber

画像認識技術で来店者情報を可視化

東京・上野の商業施設「PARCO_ya(パルコヤ)」では、AI搭載のカメラを店舗に設置し、来店者数や属性、店舗内の混雑状況などを分析し、スタッフの人員配置や商品陳列の最適化に役立てています。 

参考:https://manesetsu.jp/4888

画像認識で未来の肌をシミュレーション

オルビス株式会社は、「AI未来肌シミュレーション」というサービスを提供しています。このサービスでは、現在の肌状態や生活習慣を分析し、5年後、10年後、20年後の肌を予測します。 

参考:https://pr.orbis.co.jp/app/miraihada/

製造業での不良品検品

キユーピー株式会社は、食品工場の製造ラインでAIを活用し、原材料の不良品検知を行っています。製造ラインを流れる食品を撮影した動画をディープラーニングの画像認識技術で解析し、良品・不良品を自動で判別するシステムを構築しています。 

参考:https://www.ryutsuu.biz/strategy/mn6933-3.html

顔認識による入退館管理

清水建設株式会社では、建設作業所や事務所のドアに顔認証を使ったスマートロックを導入することで、入退室時の時刻が勤怠管理システムに自動反映され、勤務場所の滞在時間を正確に把握できるようになっています。 

参考:https://it.impress.co.jp/articles/-/27320

物体検出による森林管理

株式会社パスコは、衛星画像とAI判読技術を用いた森林変化情報提供サービス「MiteMiru森林」を提供することで、森林の現況把握や変化のモニタリングを効率的に行うことを可能にしています。

参考:https://www.pasco.co.jp/biz/service/shinrin-henka/

画像分類にAIを活用するときの注意点

画像を使ってAIによる機械学習を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。

著作権の注意

インターネット上で自由にダウンロードできる画像の多くは著作権で保護されています。そのため、私的利用以外の目的で画像を無断で使用すると、著作権侵害に該当する可能性があります。機械学習の情報解析目的で著作物を利用できる場合もありますが、その範囲を超えた利用は違法になるため、利用条件を十分に確認することが必要です。

目標の明確化

AIを画像分類に活用する際には、プロジェクトの方向性を明確にすることが重要です。どのようなタスクにAIを使用するのか、期待される精度や速度を具体的に設定することで、システムの設計が効率的になります。

高品質な画像データの準備

画像分類の成功には安定した品質の画像が不可欠です。撮影環境を整え、良好な照明や背景、適切なカメラ設定を用意します。ノイズやぼやけを最小限に抑え、データの品質を一定に保つことが重要です。

特徴を捉えやすい画像の収集

対象物を適切な角度や距離から撮影し、特徴を明確に捉えるよう工夫します。特に小さな部品や複雑な形状を撮影する場合には、撮影方法を工夫して必要な情報が十分に記録されるようにすることでAIが正確な分類を行いやすくなります。

最後に

画像認識は人工知能の力を借りて膨大な情報を効率的に処理し、人間の作業を補助する重要な役割を果たしています。高精度の分類を実現するためには、大量のデータを使った学習と最適なモデルの設計が必要です。また、画像認識の技術は、特定の課題を解決するだけでなく、新しいサービスやビジネスモデルを生み出す可能性を秘めています。

著作権やデータ品質への配慮、明確な目標設定を怠らないことが、成功の鍵となります。画像認識を導入することで得られる効率化や精度向上の恩恵を受けながら、その限界や課題にも目を向けることが求められています。

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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