孫正義氏:知能と知性の違いとは?知能から知性へのロードマップを描く

softbank world2024

ソフトバンクの孫正義氏は、SoftBank World 2024での基調講演において、AGI(汎用人工知能)がASI(超知性)へと進化する未来について語りました。情報(検索)から始まったデジタル革命は、今や知識(GPT)、知能(o1)の段階に到達し「知のゴールドラッシュ」を迎えていると発言しました。やがて知性(パーソナルメンター)という形でASIの状態となることを定義すると同時に、o1の基礎技術である、強化学習を用いてそのメカニズムを論理的に説明しました。基調講演の様子はSoftBank World 2024へのアカウント登録後視聴することができます。

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目次

講演内容(詳細)

超知能から超知性への進化

  • AGIは段階的に進化する。レベル1:人間との自然な会話、レベル2:博士レベルの問題解決力、レベル3:エージェント、レベル4:イノベーションの創出、レベル5:組織全体の仕事を遂行。その先のASIは10,000倍の「超知能」が「知性」へ進化する。「超知性」は10年以内に進化。
  • 人間のニューロンは1,000億個、シナプスは100兆個で、賢さはこれらの数に依存するものの、DNAレベルで規定されているため数億年経っても変わらない。GPT-4で1.8兆パラメーターであり増え続けている。可能性はさらに広がる。
  • 振り返ると、デジタル革命は検索から始まった。コンピュータは知識を引用することはできたが「理解」はできていない。知識を「理解」するのは人間であった。一方でGPTでは知識の「理解」までできる。ただ「考えて」いるのだろうか(単純な言葉の数珠繋ぎに過ぎないのではないか)。

OpenAI o1の進化

  • OpenAIがo1モデルを発表した。GPT(4o)からo1へ。(接頭辞からGPTが外れ)別ラインナップに。つまりこれまでのGPTとは別種のモデルとなったことを示唆する。
  • 博士号レベル物理・化学・生物の試験で人間の正答率を超えた。数学、コーディングも同様。これまでの検索、思考(GPT)の強みは速さであった。これからは深さ(質)。知のゴールドラッシュが来た。
  • o1には多段階の推論システムであるCoT(Chain of Thought)が組み込まれている。高い回答品質を実現するに留まらず、安全機能も強化されている。

強化学習と報酬

  • o1では強化学習のメカニズムを用いてる。強化学習ではエージェントの行動に対し報酬が支払われ、Q関数を最大化するような最適な行動選択を行う。
  • o1では数千のエージェントが並列で数十億回の試行錯誤をしている。Q関数を更新することで、報酬の大きいエージェントを強化していくことでより確からしい推論を実現可能に。
  • しかし筋の良い推論だけでは既存の枠組みの再開発に留まってしまう。o1は探索機能(筋の良い推論とは別方向の行動も強化の対象とする)も付加。未知の解決策=発明、につながる。
  • 「知る」→「理解する」→「考える」に加え「発明する」が実現可能な段階になってきた。

パーソナルエージェント・パーソナルメンター

  • 個人専用のエージェントが開発されるだろう。エージェントといった場合に、BtoB、BtoC向けといった捉え方をしていたが、AtoAという概念が加わる(Agent to Agent)。
  • エッジのエージェント(冷蔵庫、お風呂)とパーソナルエージェント(個人専用)で連携する。寝ている間に日程調整や仕事を進めておいてくれるようになる。
  • さらに発展形が考えられる。ライフログと感情エンジンを用いることで、長期記憶の役割も担うようになるだろう。個人が何を良いと感じ、悪いと感じるかを理解するようになる。
  • 最終的には自己意識が形作られる可能性もある。個性、思いやり、倫理観、達成感といったものも含まれる可能性がある。パーソナルエージェントからパーソナルメンターへ。

知能と知性の違い(クロージング)

  • 情報(サーチ)→知識(GPT)→知能(o1)→知性(パーソナルメンター)。
  • 知能=計算+論理的思考+記憶。知能だけでは有能だが危険な状態。
  • 知性=知能+慈愛+感情+共感+調和。知性はあなたを守ってくれるもの。
  • 知能を持つ次元がAGI。知性を持つ次元がASI。ASIとしては「感情理解」「意思を持つ」「調和をとる」という3つのレベルを定義している。
  • Q関数の最後の報酬は、あなたと社会の幸せとなるだろう。知性を持ったAIが実現する。情報革命で人々を試合わせに。

「Softbank World2024:孫社長基調講演」について一言

かなり意義深いものだったので原文に近い形でお届けします。今回の基調講演の大きなポイントとしては、AGIとASIの状態が明確に定義されたこと、o1の基礎技術である強化学習を軸に、ASIの実現アプローチについて、夢物語ではなく、説明可能な形で表現されたことだと思います。非常に納得感を持って聞いてしまいました。偉そうですが、ストーリー構成もかなり美しく、要素が洗練されていた印象でした。

o1については推論に特化した機能であることで日頃なかなか活用できていなかったのですが、やはりわかる人にはわかるすごすぎる機能だったようです。。。使い方や粘り方が依然として重要ですが、企画系の仕事には使えそうなので色々可能性を試してみたいところです。

とにかく、スピードとスケールが凄すぎます。キャッチアップしていかないとあっという間においていかれるという印象を持ちました。先ほどのo1にしても既に博士号レベルの革新的なことをしようとしている人がメリットを享受できるツールになっていることが示唆されていますし、パーソナルメンターが実現すれば生活の風景が激変します。あっという間にAIやそれを先導する人間に使われてしまうので、より使う側としての気概を持たねばと思いました。

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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