経済産業省は2024年9月19日、「デジタルガバナンス・コード3.0」を正式に改訂しました。この改訂は、6月に開催された「企業価値向上に向けたデジタル・ガバナンス検討会」での議論を基に、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて企業価値を向上させるための具体的な指針を提供するものです。デジタル人材の育成やサイバーセキュリティ強化が、現代のビジネス課題に対応するための重要なポイントとして新たに強調されています。
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デジタルガバナンスコードの構成
デジタルガバナンス・コードは、DX経営による企業価値向上を目的とした指針であり、経営者が意識すべき「3つの視点」と、それを支える「5つの柱」から構成されています。
DX経営に求められる3つの視点
- 経営ビジョンとDX戦略の連動:企業は、急速に変化する経営環境に対応し、持続的に企業価値を向上させるために、経営ビジョンと連動するDX戦略を策定・実行することが求められます。
- As is – To be ギャップの定量把握・見直し:企業が目指すべき姿(To be)と現在の姿(As is)のギャップを定量的に把握し、KPIを活用して戦略の適切な見直しを行う必要があります。
- 企業文化への定着:持続的な企業価値向上を達成するためには、DX戦略の実行を通じて企業文化を変革し、根付かせることが不可欠です。
DX経営に求められる5つの柱
- 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定:経営者は、データ活用やデジタル技術の進化に伴い、リスクと機会を見据えた経営ビジョンとそれを支えるビジネスモデルを策定する必要があります。
- DX戦略の策定:経営ビジョンを実現するためのDX戦略は、データ活用や競争環境の変化を踏まえ、具体的な施策として策定されるべきです。
- DX戦略の推進(組織、人材、セキュリティ):DX戦略を推進するためには、適切な組織づくり、人材育成、そしてセキュリティの強化が不可欠です。特に、デジタル人材の確保や育成、ITシステムの安全性が重要なポイントとして強調されています。
- 成果指標の設定・DX戦略の見直し:DX戦略の成果を評価するための指標を設定し、定期的に戦略を見直しながら、持続的な成長を目指す必要があります。経営者は、これらの指標を基に適切な見直しを行うことが求められます。
- ステークホルダーとの対話:企業は、DX戦略やその成果を投資家や他のステークホルダーに対して適切に伝え、対話を深めることが重要です。これにより、企業の価値創造ストーリーを共有し、ステークホルダーとの信頼関係を築きます。
デジタルガバナンスコード改訂のポイント
まず、今回の改訂では「DX経営による企業価値向上」という副題が新たに追加され、DXの推進が企業価値にどのように貢献するかを強調しています。
特に、データ活用の重要性が再認識されており、経営におけるデータ連携の役割が明確化されています。データが企業成長の中核を担う要素として強調されており、今後の経営戦略において、デジタル技術の効果的な活用が企業価値向上に直結することが示されています。
さらに、デジタル人材の育成・確保に関する内容も大幅に強化されました。企業内のデジタルスキルの標準化、経営者を含めた役員の意識改革、社員のキャリア形成支援が求められており、これらの取組みがDX推進の成功の鍵となるとされています。
加えて、サイバーセキュリティリスクへの対応も強化されました。第三者による監査やサプライチェーン保護に向けた対策が重視され、セキュリティリスクの高度化に備える必要があるとされています。経営者は、このリスクに対して効果的な対策を講じ、企業の持続的な成長を支える体制を構築することが求められます。
「デジタルガバナンスコード改訂」について一言
デジタルガバナンスコードはDX推進と企業価値向上の両輪を回すためのガイドラインです。情報処理促進法に基づく指針と施行規則を根拠としているだけでなく、DX銘柄・DXセレクションといった商業的評価の根拠にもなっています。
バージョン2.0が公表された2022年9月から2年ほど経過し、生成AIによる盛り上がりが考慮されていますが、主な部分は人材に関する部分です。AIというより企業が取り組むべきDXの指針と言う位置付けで把握しておけば良いと思います。