生成AIとは?生成AIが注目される背景と生成AIの種類

生成AIとは?

生成AI(Generative AI)は、テキスト、画像、動画、音声などの多様なコンテンツを自動的に生成することができるAI技術です。この新しいAI技術は、従来のAIが得意とする予測や自動化とは異なり、創造的なプロセスを支援し、専門知識を持たない人でもプロンプト(指示文)を通じて簡単にコンテンツを生み出すことが可能です。ChatGPTやDALL-Eといった生成AIの登場により、ビジネスやエンターテインメント、教育など、さまざまな分野での活用が急速に進んでいますが、一方で、生成AIには倫理的な問題やセキュリティリスクも存在し、その利便性と危険性についての理解が求められています。

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目次

生成AIとは

生成AI(Generative AI)とはさまざまなコンテンツを生成できるAIのことです。従来のAIでは決められた行為の自動化が目的であるのに対し、生成AIは学習したパターンやルールを使ってテキスト、画像、動画、音声などのコンテンツを生成することができます。

生成AIの大きな特徴は専門知識を持っていない人であってもプロンプト(AIに対する命令文)さえ作れれば比較的簡単にコンテンツを作り出せる点です。2021年からはChatGPTによるテキスト生成やDALL-Eによる画像生成など生成AIが大きな話題に挙がり、ガートナージャパンは2022年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドに生成AIを挙げております。

市場で最も注目されている強力なAI(人工知能)テクノロジの1つが、ジェネレーティブAIです。これは、コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ現実的な、まったく新しいアウトプットを生み出す機械学習手法です。

ジェネレーティブAIは、ソフトウェア・コードの記述、医薬品開発、ターゲット・マーケティングの促進といったさまざまな活動に利用できます。しかしその一方で、詐欺、不正、政治的な偽情報の発信、なりすましなどに悪用される可能性もあります。2025年までに、生成される全データのうちジェネレーティブAIによるものの割合は、現在の1%未満から10%になるとGartnerは予測しています。

Gartner、2022年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表

ただし、生成AIがコンテンツを生成するには大量の学習データが必要です。生成AIが活用されているデータ分析手法はディープラーニングと呼ばれる機械学習です。従来の機械学習は教師あり学習と呼ばれる、人間が回答を用意したデータをAIに提示し、回答のパターンやルールを学習することで予測ができましたが、ディープラーニングの活用により、AIは自ら学習を進めることで学習データを用意せずともAI単独でオリジナルコンテンツを作れるようになりました。

従来のAIとの違い

従来のAIはデータを整理や分類を学習し、学習結果を元に予測を行い結果を出力してきました。決まった行為の自動化が目的であり、出力されるものは構造化されたものが大半です。愛して、生成AIは想像を目的にデータのパターンやルールを学習しています。そのため、構造化されていないデータを元に学習し、新しいコンテンツを作ることが可能です。生成されたテキストや画像の創造性は従来のAIよりも精度が高く、人間にしかできないといわれていた領域にまで発展する可能性を秘めているのが生成AIです。

従来のAI生成AI
学習視点情報の整理や分類パターンやルール
目的予測創造
社会的インパクト決められた行為の自動化新しいコンテンツの生成
学習データ構造化されたデータ構造化されていないデータ
従来のAIと生成AIの比較

生成AIが注目される背景

生成AIが注目されるようになったきっかけは2022年11月にOpenAIがChatGPTを公開したことです。従来の生成AIでも文章を作ることはできましたが、ChatGPTは非常に高度な文章生成能力を持ち、誰でも簡単に使うことができることから関心が高まりました。

コンピュータの性能が高くなったことにより、学習できるデータ量が飛躍的に改善し、非常に速い速度でコンテンツを生成することができることから、企業内での業務効率化や品質向上、アイデア創出などに利用され、その後、生成AIを利用したビジネスソリューションも登場するようになりました。

ビジネスの最適化

生成AIを利用すると要約作成、マーケティング、カスタマーサービス、営業などビジネスのあらゆる分野を最適化することができます。設計者が指定した条件を基に、実用的なアウトプットを短時間で大量に生成することができますので、設計者はアウトプットのなかから最適案を選ぶことでビジネスが加速します。また、AIには固定概念がありませんので、制約条件を満たしたうえで人間には思いつかないようなアウトプットを想像する可能性があります。

生産性向上

生成AIを活用することで作業を効率化し、生産性を向上させることができます。ChatGPTが台頭したときには文章の作成で注目されましたが、レポートや要約だけではなく、翻訳や営業シナリオの作成、コーディングなどアウトプットは設計者によってさまざまです。画像、動画、音声などを生成AIで作成することもできますので、生成AIを使うことでコストと時間を削減することができるようになります。

生成AIで生成できるもの

生成AIで生み出せるものとしてはテキスト、画像、動画、音声などが有名です。命令文や与えられた条件のもと、さまざまな情報を組み合わせて文章や画像を作ることが可能です。特に文章要約や音声データからの議事録作成のように与えられたデータの内容を理解してまとめる能力は非常に高く、人間ではインプットに何時間もかかるものを数秒~数分で文章で出力できます。また、音声データの文字起こしのような単純に時間のかかる作業を効率的に処理するという使い方にも有効です。

現状の生成AIは文章の要約、単純作業の効率化、画像生成などの切り口で語られることが多いものの、ビジネスで活用できる領域としてはコミュニケーションとアイデア創造が挙げられます。どちらも時間とコストがかかり、難易度が高い領域ではありますが、生成AIによる代替により企業価値を大きく向上させることができるようになります。

反対に、生成AIには不向きな側面もあります。特に人間の感情の理解や倫理観を理解したり、解釈したりする能力はなく、学習したパターンによる予測しかできません。十分な学習データを用意することで人間のような感情や倫理観を持ったようなアウトプットにできる可能性はありますが、基本的には生成AIにはできないことです。

生成AIの種類

生成AIの種類

テキスト生成AI

テキスト生成AIは、ユーザーが入力したプロンプト(指示や命令のこと)に基づいて、自然な文章を自動生成するAIです。与えられた条件を満たすように、人間が書いたような自然な文章を作成したり、AIと対話したりすることができます。ビジネスではレポート作成、文章要約、状況に応じたメール案の作成などに転用でき、手間と時間を大幅に削減することができます。特に有名なテキスト生成AIとしてはChatGPTとGemini(旧Bard)が挙げられます。

  • ChatGPT:OpenAIが開発した自然な文章を生成する対話型AI。テキスト生成、翻訳、文書要約などを行うことができます。
  • Gemini:Googleが開発した対話型AI。マルチモーダル(異なる入力形式を同時に扱うこと)設計で、テキスト、画像、動画、音声などのデータ形式に対応しています。

画像生成AI

画像生成AIは、プロンプトを入力すると指示に沿った画像を自動生成するAIです。以前は画像作成にはイラストレーターが時間をかけて作る物でしたが、画像生成AIが登場したことで短時間で高品質な画像の作成ができるようになりました。ただし、イメージ通りの画像を作るためにはプロンプトに工夫をする必要があります。代表的な画像生成AIとしては、Stable Diffusion、Midjourney、DALL-Eなどがあります。

  • Stable Diffusion:StabilityAIが開発したAI。高性能で写実的な表現の画像を生成できます。
  • Midjourney:チャットアプリケーションDiscord上でプロンプトを入力することで利用できる画像生成AI。生成画像のトーンやスタイルの調整ができます。
  • DALL-E:OpenAIが開発した画像生成AI。ChatGPT上で利用でき、日本語にも対応しています。

動画生成AI

動画生成AIは、テキストや画像を指示文として入力することで動画を自動生成するAIです。テキスト生成や画像生成と比較すると高度な処理が必要となるため実現が難しいといわれておりましたが、2023年にRunway社からRunway Gen-2という動画生成AIが発表され、ついで2024年にOpenAIからSoraが発表されたことで高画質かつ長尺の動画を生成できるようになりました。

  • Sora:OpenAIに開発された動画生成AI。最大1分の長尺動画を作ることができますが、一般公開はされておりません。
  • Runway Gen-2:Runway社が開発した動画生成AI。テキストか画像を入力することで数秒程度の動画を生成することができます。
  • Kaiber:テキストや画像から動画を作ることができる動画生成AI。動画から別の動画を生成することもできます。
  • GliaCloud:ニュース記事やSNS投稿、統計データなどのテキストから動画を生成することができるAI。内容に適したナレーションや映像、BGMなども入れることができます。

音声生成AI

音声生成AIは人間の音声データを学習することで新たな音声を生成するAIです。特定の人物の音声データを学習させることで、その人が話しているかのような自然な音声を作り、人間のような喜怒哀楽などの感情を取り入れることもできます。ビジネスではナレーションやコールセンターの自動応答などで利用されます。

  • Amazon Polly:AWSのサービスで、数十の言語に対応した音声生成AI。テキストから自然な音声に変換することができます。
  • VALL-E:Microsoftが開発した音声合成AI。3秒間の音声からその人の声を再現でき、再現した音声に入力とは別の言語の読み上げをさせることができます。

生成AIに用いられている生成モデル

生成AIの機能は、指示の入力から出力までを司る技術(生成モデル)に支えられています。ここでは主要な生成AIに用いられている代表的な生成モデルについて解説します。

VAE

VAE(Variational Autoencoder、変分オートエンコーダー)は画像生成AIに採用されている生成モデルの1つです。入力された画像データの特徴を学習し、その特徴を持った新しい画像を生成することができます。特定の画家の絵画を学習させることで、その画家の特徴を持った絵画を作成することができるため利便性は高いものの、再現度が高いため著作権侵害が懸念されているほどです。

GAN

GAN(Generative Adversarial Networks、敵対的生成ネットワーク)はディープラーニングによる画像生成モデルの1つです。ジェネレーター(生成器)とディスクリミネーター(識別器)という2つのニューラルネットワークから構成され、ジェネレーターがランダムに画像を生成し、学習用の正しい画像であるディスクリミネーターに近づけようと学習を繰り返すことで精度を挙げていく手法です。学習が不安定になりやすいことが懸念点でしたが、技術進歩により課題も解決されつつあります。

拡散モデル

拡散モデル(Diffusion Model)は学習用の画像にランダムノイズを加えていき、そのノイズを徐々に取り除いて元画像に復元するプロセスを学習する手法です。GANの発展形ともいわれています。ノイズを加える拡散過程とノイズを除去する生成過程を繰り返すことで精度の高い画像を生成しています。

GPT

GPT(Generative Pre-trained Transformer)は、OpenAIが開発した自然言語処理モデルで、膨大な量の文章データで学習を行うことにより非常に高い精度の文章生成を実現しています。2022年にGPTをベースとしたChatGPTが公開されるとテキスト生成AIの代名詞となるほど有名になりました。質問に対する的確な回答、自然な文章作成、コーディング、翻訳など高い汎用性が評価されており、応答速度も速いことが特徴です。Microsoft製検索エンジンbingと提携し、検索エンジン上でGPTが使えることも話題になりました。

生成AIの課題と危険性

生成AIは自ら学習して精度を高めることができますが、まったく何もない状態から生成する技術ではなく、元になる学習データの用意やパラメータコントロール、制約設定などには人間が介在することになります。指示が的確でなければ生成されたものにはバイアスがかかってしまい、誤った情報を利用してしまうことになります。

ハルシネーションやフェイクニュース

生成AIは学習データを基に出力をしますが、出力されたデータには事実誤認や偏ったデータが含まれている可能性があります。学習データに誤りがあることもありますが、指示が誤っていれば結果がおかしくなることもあります。また、正しい情報をインプットしていても、必ずしも生成AIが正しい情報で返すとは限らないため、情報の真偽の判定は人間が行う必要があります。

情報漏洩やセキュリティ上の懸念

生成AIに文書を要約させる際には、事前に資料をインプットさせる必要がありますが、このインプットデータに個人情報や機密情報が含まれている場合には生成AIの出力に利用されてしまうことがあります。一度学習したデータは別の回答にも利用される可能性があるため、入力情報には十分なチェック体制が必要です。

責任の所在が不明確

生成AIはインターネット上の情報を参照することがありますが、元になるデータには事実の誤認、明らかな誤り、偏った意見などがありますが、インターネット上のデータを参照しているため入力データを制御することはできません。そのため、出力結果には必ずしも正しい情報が使われているとは限らず、生成されたコンテンツの責任の所在が不明確になります。

最後に

生成AIは創造的なコンテンツを自動生成する革新的な技術として注目を集めています。特に、ChatGPTのようなテキスト生成AIやDALL-Eのような画像生成AIは、ビジネスの最適化や生産性の向上に貢献する一方で、ハルシネーションや情報漏洩といったリスクも抱えています。生成AIの機能はディープラーニング技術に支えられており、学習データの質や指示内容が結果の精度に大きく影響します。したがって、生成AIを活用する際には、利便性だけでなく、潜在的なリスクと責任の所在についても十分に考慮する必要があります。これにより、生成AIのメリットを最大限に活かしつつ、リスクを最小限に抑えることができます。

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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