韓国のLG AI研究所は新たに基盤モデルである「EXAONE 3.0」を発表しました。米国や中国がリードする基盤モデルの分野において、オープンソースという形で公開することで、追い上げを図る一手として期待されています。韓国勢はこれまでこの分野で遅れをとっていましたが、EXAONE 3.0はその状況を打破するべく、高性能かつ経済的、そして倫理的に優れたAIモデルが登場しました。
EXAONE 3.0の概要
LG AI研究所が開発したEXAONE 3.0は、最新のAI技術を駆使し、韓国語と英語の両方で世界トップレベルの性能を誇るAIモデルです。このモデルは、オープンソースであり、ユーザーのニーズに応じてさまざまなタスクを効率的に処理できるように設計されています。
特に専門的な産業分野での活用が期待されています。EXAONE 3.0は、前バージョンから大幅に進化し、より高性能で経済的かつ倫理的なAIソリューションを提供します。Hugging Faceから利用することができます。
EXAONE 3.0の性能
EXAONE 3.0は特に、英語と韓国語の両方でグローバルトップレベルのスコアを達成しています。ベンチマークテストでは、翻訳タスクや複雑な言語処理において他の主要AIモデルを凌駕する結果を示しました。
競合モデルとしては、アリババが開発したQwen 2 7B、MetaのLlama 3.1 8B、MicrosoftのPhi 3 7B、GoogleのGemma 2 9B、そしてMistral AIのMistral 7Bが挙げられます。これらのモデルもそれぞれ独自の強みを持っていますが、EXAONE 3.0は英語だけでなく、韓国語においても他のモデルを上回る性能を示しています。
EXAONE 3.0の経済性
AIモデルの商業利用において、経済性は重要な要素です。EXAONE 3.0は、前バージョンに比べて処理速度を56%向上させつつ、運用コストを72%削減することに成功しました。これにより、EXAONE 3.0は大規模なデータ処理が求められる企業にとって、コスト効率の高い選択肢となっています。これまでに公開されたEXAONE 1.0と比較して、わずか6%のコストで運用可能でありながら、性能は大幅に向上しています。
EXAONE 3.0の倫理的評価
AIの発展において、倫理的な側面も無視できない重要なポイントです。LG AI研究所は、EXAONE 3.0の開発においてAI倫理を厳格に考慮しており、モデルの安全性と倫理性を評価しました。評価の結果、EXAONE 3.0は性差別や違法行為に関する応答を行わない点で優れた結果を示しましたが、さらなる改善が必要な部分も明らかにされました。AI技術の進展には、透明性の確保が不可欠であるという考えのもと、現状の評価結果を公開しています。
「EXAONE 3.0」について一言
GPTやLlamaのような、いわゆる基盤モデルの開発競争は激化しています。英語や中国語といった言語対応、医学や物理のような専門性、経済性、倫理面などの切り口で米国、中国を中心に開発競争が行われており、今回の「EXAONE 3.0」は韓国勢から参戦ということになります。
日本では「ELYZA」やNTTの「TSUZAMI」のようなモデルが開発されていますが、資本力の競争でもあるため、メガテック企業との競争では勝ち目がないという論調が目立つような気がします。モデルの選定が肝であるAI活用なので、今後もモデル開発の動向については注意が必要です。