学びに、刺激に溢れる。ソフトバンク孫正義氏の株主総会プレゼン要約

ソフトバンクグループ株式会社は2024年6月21日(金)に第44回定時株主総会を開催しました。決算の概要、AI分野に関する今後の取り組むについて、示唆に富む孫正義氏の発言を要約してお伝えいたします。

目次

ニュースの要約

1時間にわたるプレゼンの要約と30分のQAの抜粋をお送りします。

ソフトバンクグループ株式会社 第44回定時株主総会 アーカイブ動画(2024年6月21日開催)

プレゼン

1、経営の要諦

2023年度のソフトバンクの売上高は前年度の2.8倍の6.7兆円、営業利益は前年度比17%減の8,760億円となった。しかし孫氏は単年の売上高や、個別事業の成長ではなく、中長期的な企業価値最大化が重要であると話しました。孫氏がモニタリングするのは各事業部門の事業価値であり、投資家的な視点でのポートフォリオ経営が、大企業経営者の最低限の役割であり、事業家か投資家かという問いはナンセンスであると言いました。

2、進化と増殖

成長は「進化」と「増殖」の連鎖に基づいている。仕組みを革新させる「進化」、営業によって仕組みを広げる「増殖」。日本の停滞はこのサイクルの不調によるものと分析しています。ソフトバンクにおいても、ソフトウェアの流通、Yahoo!、モバイルインターネット、アリババへの投資、アームの買収を通じて技術革新を推進してきた。ただしソフトバンク創業から43年、まだ冒険の始まりに過ぎないと感じていると話しました。

3、ASIとは

ASIとはArtificial Super Intelligence(人工超知能)の略で、人間の知能を遥かに超える知的存在です。現在のAI技術や3-10年で迎えるとされる人間と同等の知的水準のAGI(Artificial General Intelligence:人工汎用知能)をさらに進化させたものです。孫氏はASIの知能水準を天才的な頭脳を持つ人間の知能の1万倍と定義し、これが孫氏が目指す最終目標です。

4、ASIで実現する世界

ソフトバンクのミッションは「情報革命で人々を幸せに」ですが、孫氏はこのたびソフトバンクの使命を「人類の進化に貢献すること」と定義し、ASIの実現がその鍵であると語りました。超知能であるASIの力を借りて人類の進化を加速させることで、人類が直面する病気、災害、事故、地球環境などの多岐にわたる問題を解決し、より幸福な社会を実現したいと考えています。

Q&A(一部)

NVIDIA買収の動きについて

ソフトバンクがアームを買収した翌月、孫正義氏はNVIDIAのCEOであるジェン・スン・ファンとカリフォルニアの自宅で4時間にわたる会談を行いました。孫氏はアームとNVIDIAを合併させ、AI分野で協力する提案をしました。

具体的には、ファン氏が2.5%持っていた株を10%に増やし、残りの必要資金は孫氏が全額負担するというものでした。しかし、ファン氏は金銭的な理由や孫社長の下で仕事をすることなどを理由に難色を示し、提案は実現しませんでした。

その後、ソフトバンクはビジョンファンドを通じてNVIDIAの株を保有し、最終的には利益確定のために売却しました。さらに、コロナ禍での資金確保のためにアームとNVIDIAの合併を模索しましたが、これも実現には至りませんでした。

もし実現していれば、ソフトバンクはNVIDIAの筆頭株主として大きな価値を持つことになり「逃した魚は大きかった」と発言しています。ただし、神様がもう一度チャンスを与えてくれても、NVIDIAではなくアームを選ぶと述べました。アームの将来性を非常に信じており、現在もその選択に後悔はないと強調しました。

OpenAIへの出資の動きについて

OpenAIへの出資に関して、孫正義氏はサム・アルトマンと直接話し合い、ソフトバンクが1兆円を出資する話を進めていました。孫氏は出資を決意しており、サムも前向きでしたが、最終的にはマイクロソフトが1兆数千億円を出資することが決まったと経緯を説明しました。

孫氏はこの決定を尊重し、マイクロソフトの技術力、資金力と販売網がOpenAIにとって適切なパートナーであると評価しました。孫氏は、逃した機会について悔やむことなく、今後の使命であるASI(人工超知能)の実現に向けて複数のパートナーと共に取り組むことに集中しています。

「ソフトバンク孫正義氏の株主総会プレゼン」について一言

要約してしまうととてもシンプルですが、とても文章では表現しきれないような魅力があるので是非動画を見ていただきたいです。「足元の株価、業績など小さなことではないか」など信じられないほど視座が高く、またそういう発言が浮かず、投資家からも拍手で受け入れられている状況、尊敬に値します(これ以上の語彙がなく・・・)。

通信会社でありながら、半導体(アーム)、データセンターなど広くインフラを押さえています。ASIの一番濃い部分(言語モデル)はOpenAIやGoogle、Metaといったテックジャイアンとが主役になるのかもしれませんが、世の中に普及させるドライバーを持っているのは間違いなくソフトバンクなので、「人類の進化に貢献する」という使命も夢物語のような気はしません。

出典:ソフトバンクグループ株式会社 第44回定時株主総会 アーカイブ動画(Youtube)

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執筆者

慶應義塾大学卒業後、総合化学メーカーを経てデロイトトーマツコンサルティングに在籍。新規事業立ち上げ、M&A、経営管理、業務改善などのプロジェクトに関与。マーケティング企業を経て、株式会社ProFabを設立。ProFabでは経営コンサルティングと生成導入支援事業を運営。

TechTechでは、技術、ビジネス、サービス、規制に関する最新ニュースと、各種ツールの実務的な活用方法について、初心者でも理解できる明瞭な発信を心掛ける。日本ディープラーニング協会の実施するG検定資格を保有。

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