2024年6月3日、ライオン株式会社とNTTデータは、ライオンの衣料用粉末洗剤の生産技術において、熟練技術者の暗黙知を生成AIを用いて形式知化する取り組みを開始したとのことで、ニュースの要約をご紹介いたします。
ニュースの要約
少子高齢化と労働力人口減少により、熟練技術者の技術継承が課題となっています。新規参画者への技術継承にはスキルと時間を要し、特に暗黙知の文章化と共有に課題がありました。
ライオンは、生成AIを活用した業務効率化や知識伝承ツールの開発を進めています。NTTデータとライオンは、2022年から業務提携を開始し、DX推進や技術継承に取り組んでいます。
ライオンとNTTデータは、ライオンの衣料用粉末洗剤の生産技術領域を対象に、暗黙知となっている熟練技術者の豊富な業務知識を生成AIを用いて形式知化する取り組みを開始しました。この取り組みの主要なステップは次の通りです。
熟練技術者へのインタビューや社員間のワークショップを通じて、暗黙知となっている技術や知識・ノウハウを収集します。
収集した情報を「勘所集」として文書化します。この勘所集には、熟練技術者が持つ重要なポイントやコツが詳細に記されています。
生成AIを活用した検索サービス「知識伝承AIシステム」に勘所集を取り込み、新規参画者が容易に検索・活用できるようにします。これにより、熟練者の技術や知識・ノウハウを効率的に継承することが可能となります。
NTTデータの先進的な技術や知見を活用し、インタビュー結果のまとめや勘所集作成の工程に生成AIを適用して効率化を図ります。
この仕組みは、新たに衣料用粉末洗剤の製造プロセス開発業務にあたるメンバーが、勘所集を参照することで、熟練者の技術を迅速かつ効率的に習得し、担当業務を遂行できるよう支援します。
ライオンは、本取り組みにより既存文書の整備と熟練者の暗黙知の抽出を進め、国内外での技術力強化を図ります。NTTデータは、ライオンとの連携を強化し、知識伝承と活用のユースケースを確立し、生成AIを活用したサービス提供を推進し、将来的には、NTT版大規模言語モデル「tsuzumi」の活用も検討します。
ニュースについて一言
熟練技術者の高齢化、後継者不足で悩む企業は製造業を中心に多く存在すると思います。失われてしまう知見を遺すことができることは日本の産業においてもとても意義のあることだと思います。
一方で、「熟練技術者」と呼ばれる方は往々にして言語化が得意ではない傾向があると感じており、収集した情報の整備知見もさることながら、①必要な情報の大枠を定義し、②「熟練技術者」から情報を抽出する、プロセスが最も難易度が高いのではないかと思いました。
現状①、②は人間がやっていると思うので、AIが代替することができれば技術的にすごいと思いますし、ビジネスとしての規模感も出ると思いました。
出典:https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2024/060300/